毎年冬になると、インフルエンザの予防方法が社会的な関心事になる。その予防方法は、主に「バランスの良い食事と睡眠」「インフルエンザワクチン」「手洗い・うがい・マスク」と言われる。
「バランスの良い食事と睡眠」は、体を元気にしておくことで、病気への抵抗力をつけるために最も重要である。毎年流行する季節型のインフルエンザは、重症化するリスクを持っていなければ、特別な薬がなくても自分の免疫で治る病気である。新型インフルエンザとは異なっている。冬はインフルエンザ以外にも、風邪などのウイルス性疾患にかかりやすい。そのため、バランスの良い食事と睡眠によって、常に体を健康な状態にしておき、少し体調が悪いと感じたらすぐに休み、体の病原体への抵抗力を維持することが大事である。原始的なことに思われるかもしれないが、この基本によってウイルスが体に入っても発症を防ぎ、症状の悪化を予防できる。
「インフルエンザワクチン」は広く知られているが、「効果がない」という誤解と「費用」の面で敬遠する人がいる。確かに、インフルエンザワクチンの発症阻止の効果は100%ではないが、発症を約55%減らし、高齢者の死亡は82%減少させる(厚生科学研究「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」)。また、脳梗塞、糖尿病、COPDなどの基礎疾患を持っている人の死亡の減少とも深く相関している(Wang CS,et al:Vaccine. 2007;25(7):1196-203.)。このような効果があり、65歳以上は定期接種で無料にも関わらず、接種率は50%前後にとどまっている。高齢者や基礎疾患を持っている人の重症化を予防するため、是非医師には、インフルエンザワクチンの定期接種を受けることを広く勧めていただきたい。また、集団免疫の効果もあり、周囲の人が皆ワクチンを接種するとかかりにくい集団となるため、家族や職場、学校などで、皆で接種して予防効果を高める方法もお勧めである。これは、「手洗い・うがい・マスク」よりも効果がある。
インフルエンザ予防に効果的な方法は「バランスの良い食事と睡眠」「ワクチン」である。そしてもし体調が悪くなったらすぐに休むことが、重症化予防・早期治癒と周囲への感染防止には肝要である。
中山久仁子(マイファミリークリニック蒲郡院長)[インフルエンザ]