僕は医師10年目の総合内科医である。僕は京都の洛和会丸太町病院で医師3年目のときに、総合内科医としてのキャリアをスタートした。
総合内科医の基本は症候学である。たとえば、失神が主訴の患者さんにどのようにアプローチをするか。初期研修医時代に多少なりとも症候学を独学で勉強していたが、十分ではなかった。医師3年目に当時の上司であった上田剛士先生から、症候学をはじめとした総合内科の基礎を徹底的に叩き込んで頂いた。今の自分があるのは、あの時代があったからだ。仲間と一緒に夜遅くまで必死に働いていたが、充実した後期研修医時代だったと思う。そして、その時代に僕がポケットに入れて、常に携帯していた本がこの『診察エッセンシャルズ』である。日常で出会う、ほぼすべての症候を網羅し、それについてどのように問診や身体診察をすべきかがコンパクトにまとまっていた。潔いことに治療についての記載がなく、純粋に診断にだけ特化したマニュアルであった。洛和会の指導医陣が総出で執筆していたが、食い入るように読んだ。
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