21年前の開業後まもなく、皮膚科の往診を始めました。主訴は褥瘡が一番多いですが、湿疹、真菌症、腫瘍など、すべての皮膚疾患を診ております。最近は高齢者施設への往診依頼が多いのですが、足のトラブルに多く遭遇します。
2007年、肥厚した爪を切った行為が虐待とされて長期間看護師が拘留されるという、いわゆる「爪はぎ事件」があり、結果的には無罪となりましたが、在宅や施設でのフットケアに心理的な歯止めがかかるきっかけとなった出来事でした。
高齢者には足・爪白癬の合併も多く、爪の伸びも不良となるため、厚硬爪甲、爪甲鉤彎症なども多くみられます。糖尿病など基礎疾患があれば壊死・壊疽にも発展しかねません。写真はその1例で、家族や施設職員が手を出せず、おまけに寝具などに引っかかって爪甲下部に出血を生じています。爪を切りたくても知識がない、経験がない、技術がない、器具がない、もし爪を切って出血などさせたら始末書、という環境の中で困っていない施設はないのではないか、と思うくらいです。最近は日本フットケア・足病医学会が認定するフットケア指導士の数が増えて、在宅や施設へと活躍の場を広げてはおりますが、まだ十分とは言えません。
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