咳嗽は、欧米の文献によると、患者が医療機関を受診する最も頻度の高い症状であり、臨床検査を実施する理由として2番目に頻度が高い症状だそうである(1番が何かは書いていない)。英国では、全人口の10~15%が毎日咳嗽を経験し、米国では、OTCを含め毎年100億円以上の医療費が咳嗽の治療のために費やされている。我々臨床医は、日常的に咳嗽患者に遭遇する機会が多いが、咳嗽の原因は多岐にわたり、しばしば診断は困難である。また、意外な疾患が潜んでいることもある。
症例は、ある呼吸器専門病院で経験したものである。30歳代の女性で、アトピー性皮膚炎の既往があった。湿性咳嗽と喘鳴を訴えて近医を受診し、気管支喘息と診断され、ステロイド/長時間作用型β2刺激薬の吸入およびロイコトリエン受容体拮抗薬の内服を開始したが、症状が継続し、時に37℃台の発熱を伴うようになり、そのたびにレボフロキサシンやガレノキサシンの投与で、一時的な改善が認められていた。その後も発熱や湿性咳嗽、喘鳴が持続するため、1年以上経過したのちに別の病院を受診したところ、胸部単純X線にて右上肺野に粒状影の散在を認め、専門病院に紹介となった。喀痰検査を行ったところ、抗酸菌塗抹(2+)であり、結核菌PCR陽性であった。その後、気管支鏡検査を施行したところ、気管支内に写真のような多量の白苔が認められた。ここからも結核菌が検出され、肺結核+気管支結核と診断された。
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