医科歯科連携の重要性が言われて久しいが、実質的には十分な連携がとれているとは言い難い。しかし、齲歯治療や入れ歯治療が中心だった歯科診療は大きく進歩し、生活習慣病予防と歯科保健の関連、認知症と歯科の関連、フレイル予防におけるオーラルフレイル対策、在宅医療や誤嚥性肺炎における嚥下機能評価と摂食嚥下指導など、医科歯科連携から真の医科歯科協働の時代に変化してきている。
今までは、医科歯科連携と言えば、母子保健や学校保健における連携のように、連携とは言いながらそれぞれの役割を果たすだけの関係であったものから、糖尿病ケアにおける医科歯科協働のように、患者情報を共有し、お互いの診療を評価し、協力しながら治療するという真の協働に近づいて来ている。
認知症においては、歯周組織の慢性炎症状態、口腔への刺激および咀嚼運動による脳への刺激の有無、口腔機能の低下による低栄養、長期間にわたるバランスの悪い食事スタイル、生活習慣病の管理、歯科の問題によるコミュニケーション障害によって起こってくる社会交流の欠如などとの関連が証明されており、歯科医の介入によって認知症の発症や進展を遅らせることが報告されている。
また、住まい、医療、介護、予防、生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムでは、食べることは最も重要なケア目標であり、そのために歯科の役割が重要なことは言うまでもないが、歯科医が提供する嚥下情報が患者の医療的ケアにきわめて重要であるとともに、医師が提供する医療情報が歯科治療にとって必要不可欠な情報であったりする。加えて健康寿命の延伸のためのフレイル予防など、医科歯科連携がなければ地域包括ケアシステムは成り立たないと言っても過言ではない。
このように、現代の地域医療においては医科と歯科の連携・協働が必要不可欠であり、そのためにもそれぞれの能力を認知し、相互評価することが求められている。
石橋幸滋(石橋クリニック院長、東久留米市医師会会長)[多職種連携・協働]