No.5006 (2020年04月04日発行) P.56
二木 立 (日本福祉大学名誉教授)
登録日: 2020-04-01
最終更新日: 2020-03-31
本年度の診療報酬改定内容が公表された2月、私の教え子で、リハビリテーション専門病院に勤務する医療ソーシャルワーカーから悲痛なメールが届きました。彼の勤務する病院は良質なリハビリテーションを提供していることで全国的にも有名なのですが、今回の診療報酬改定で、「回復期リハビリテーション病棟入院料1」(以下、入院料1)の施設基準見直しにより、「リハビリテーションの効果に係る実績の指数(FIMで評価した日常生活動作指標)」が従来の37から40に引き上げられるため、入院料1が算定できなくなり、大幅な減収になる危険があるからです。過年度の実績に基づくと、現在入院料1を算定している病院の相当数が、それを算定できなくなる可能性があります。「読売新聞」2月24日朝刊も、評価基準の厳格化で「リハビリ難民 重症患者は受け入れ敬遠」と大きく報じました。
「リハビリテーションの効果に係る実績の指数」は2016年度の診療報酬改定で新たに導入されたのですが、私は「効果」を日常生活動作の改善等の「アウトカム」のみで評価することに疑問を持っていました。他面、最近は医療の効果や「医療の質」をアウトカムのみで評価することを当然視する医療関係者・研究者も少なくありません。
そこで今回はその問題点を原理的に検討します。