新型コロナウイルス感染症の患者・死亡者が世界で増え続けています。これが特に深刻なのはアメリカで、4月10日には患者数に続いて、死亡者数も世界最多となり、「感染爆発」の様相を示しています。
そこで今回は、アメリカでのコロナ感染爆発が本年11月の大統領選挙と今後の医療政策に与える影響を考えます。なお、新型コロナウイルス感染症拡大が日本の医療政策に与える影響については、感染拡大が安定した段階で、検討する予定です。
私がこのことを考えるきっかけになったのは、ジャナン・ガネシュ氏(USポリティカル・コメンテーター)の論説「コロナ禍、米政治を左傾化」(「日本経済新聞」2020年3月27日朝刊)です。
ガネシュ氏は、冒頭、ロムニー共和党上院議員の最近の政策転換を例示し、「米政治ではここへきて社会民主主義に近い政策が次々と飛び出してきている」ことに注意を喚起し、「コロナ感染拡大という緊急事態の雰囲気が高まる中、[左派的な議論が]急に勢いを増している」と指摘しています。
私が注目したのは、それに続く、次の評価・予想です。「国民皆保険制度の導入については細かいところで議論がつまづきがちだが、今回の感染拡大で判明したのは、国民皆保険制度を導入しない限り、国民は誰も医療制度によって保護されていないに等しいという痛いほど単純な真実だ。米国でも皆保険制度が必要だと主張してきたサンダース氏の考えは異端視されてきたが、長く主張してきたおかげで認められることになったということだ。(中略)つまり今なら、国民のコンセンサスを得るまではできないとしても、もう少し大規模で積極的に経済や医療制度に関与する政府が必要だという考え方で合意できる可能性はある」。