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【識者の眼】「地域における救急診療のあり方―需要の適正化も重要」小林利彦

No.5008 (2020年04月18日発行) P.67

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)

登録日: 2020-04-17

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地域を生活圏域として捉えた場合、買物などの多くはインターネット等で注文・確保することが可能であるが、通学・通勤・医療に関しては、住民が空間的に動かないと目的が達成できないと認識されていた。しかし、最近は教育をオンラインで受けることが珍しくなく、通勤に関しても、企業に属しながらのテレワークや小さな事務所または自宅のみで仕事をするSOHO(small office home office)というスタイルも少しずつ増えている。医療に関しては、従前、対面診療が原則とされてきたが、医師の地域偏在の問題もあり、「放射線科医」や「病理医」などが専門性を発揮すべき領域では、遠隔診断を目的としたオンライン診療がずいぶん前から行われていた。また、現在は、慢性疾患や難病等の経過観察をオンラインで行う診療行為も保険診療として一部認められている。

慢性疾患と異なり対面診察・対面治療が基本となる救急診療においては、インターネットなどを介した対応は通常困難であり、地域住民にとっては、居住地の傍に(夜間・休日でも)診療を行ってくれる施設があるか否かは大きな関心事となる。特に、心筋梗塞や脳梗塞等の心血管疾患では、救急車等による搬送時間なども問題となることから、人口減少が進んでいる地域では救急診療のあり方を改めて考えることが大切である。実際、地域における救急車の出動件数は圏域人口の5%程度とされており、人口が10万人の街では年間約5000台の救急車搬送がある。その一方で、搬送患者の60%近くは高齢者であり、全体の約半数は入院加療を必要としない「軽症例」だとされる。そのような状況も踏まえると、地域の救急患者のトリアージ体制も重要であり、休日・夜間の子供の受診相談としての「#8000」や、今すぐ救急車を呼ぶべきか相談できる「#7119」などの有効利用なども進めるべきである。

2020年度診療報酬改定では、「医師等の働き方改革」を推進するために、救急車ならびにヘリコプターによる救急搬送件数が年間2000件以上の施設を対象に「地域医療体制確保加算(520点)」で評価した。救急診療の実態を救急車等の搬送件数で評価することは否定しないが、かかりつけ医やオンライン相談などを有効活用する今後の対応、検討も急がれる。救急診療では供給体制の強化とともに、需要の適正化を図ることも重要である。

小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)[地域医療]

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