HPVワクチンの接種率は、先進国の中では日本が圧倒的に低い。「ワクチン接種後に、麻痺などが起こった」などの様々な有害事象があったためである。現在得られるエビデンスから、ワクチンとの因果関係があるとは考えにくい。しかしながら、「積極的勧奨の中止」の影響が大きく、開始時70%あった接種率が1%未満になってしまった。
なぜ日本だけでこのような事象が起こっているのだろうか?これは、医療従事者の中にもワクチンを否定する言説をとる人が多数おり、それをSNSで拡散しているからだと思う。Twitterなどでインフルエンサーが否定的な発言をすると、ワクチンは危ないという情報が何万人というフォロワーに届いてしまう。
毎年約1万人が発症し、2700人以上が死亡する疾患の予防法を私たち医師は知っている。一部の先進国では、このワクチンは子宮頸癌を「撲滅」するための武器として認識されるようになった。そして現在、日本を除く多くの国で積極的に推奨されている。しかし「積極的勧奨の中止」によってこの武器が使用されないという問題は、現代のSNSが生んだ大きな弊害の1つと言えよう。
この問題、時が止まってもうそろそろ7年になる。
倉原 優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)[医療SNS]