編著: | 髙松 潔(東京歯科大学市川総合病院 秋桜外来) |
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編著: | 小川真里子(東京歯科大学市川総合病院 秋桜外来) |
判型: | B5判 |
頁数: | 256頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2020年09月14日 |
ISBN: | 978-4-7849-5828-3 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
東京歯科大学市川総合病院の更年期診療、約15年の経験の蓄積を「TDC(Tokyo Dental College)メソッド」として集大成! 中高年女性のQOLに大きく関わる症状である更年期障害について、外来で遭遇しうる多彩な訴え・症状に効率的に対応するためのノウハウをまとめています。各種診断や、薬物療法、心理療法、運動療法など治療管理の実際を、豊富なケーススタディを通してわかりやすく解説。その複雑な症状、心理的・社会的要因、脂質異常症・骨粗鬆症など退行期疾患への対応も学べます。産婦人科医のほか、中高年女性を総合的に診る内科医・プライマリケア医、産業医は必読! 本書を読めば、更年期障害への対応は怖くない!
第1章:更年期と更年期障害
更年期と更年期障害
第2章:診断
更年期障害の診断
第3章:治療
1 治療法の選択と外来フォロー
2 ホルモン補充療法(HRT)
3 漢方療法
4 向精神薬
5 心理療法
6 看護カウンセリング
7 精神科・心療内科への紹介
第4章:ケーススタディ
1 プレ更年期障害を訴える女性への対応は?
2 早発卵巣不全の管理は?
3 周閉経期・閉経後の不正性器出血への対応は?
4 周閉経期女性における更年期症状やPMSの管理は?
5 HRTによるマイナートラブルへの対応は?
6 HRTはいつ頃、どのように中止するか?
7 婦人科がんサバイバーへのHRTは?
8 乳がんサバイバー女性のエストロゲン欠落症状への対応は?
9 関節痛への対応は?
10 頻尿や尿失禁への対応は?
11 不眠への対応は?
12 脂質異常症の診断・管理は?
13 骨粗鬆症の診断・管理は?
14 最適な運動療法は?
15 更年期障害による休職希望への対応は?
更年期なんか怖くない ─ 序文に代えて
「更年期障害」は誰でも知っている言葉ですが、それではどういう病気かと聞かれると、言葉に詰まってしまう婦人科医も少なくないと思います。更年期障害は300以上の症状を含むとされる症候群で、一説によると、日本でも350万人もの女性に更年期障害が現れていると推定されており、医療サイドが考える以上に苦悩している女性が多いのが現状です。また、近年増加している婦人科がんサバイバーの中でも、外科的閉経から、いわゆる卵巣欠落症状に悩んでいる人が少なくありません。
更年期障害が卑近な言葉であるが故に、「我慢していればそのうち良くなる」「私は大丈夫だったから…」といった周囲の反応や、「家事をさぼっている」といった夫の無理解が生じ、更年期障害の女性をさらに苦しめています。残念ながら医療サイドからも、更年期障害は面倒だし、漢方でも出しておこうといった、その場しのぎ的な対応がとられることもあります。一方、エストロゲンレベルの低下は更年期障害のみならず、 脂質異常症や骨粗鬆症なども惹起します。これらはsilent diseaseであり、症状が出るまで気づかないことも少なくありません。「たかが更年期、されど更年期」という言葉ほど、更年期の実態を表しているものはないと思います。
更年期障害は、その症状・要因ともに複雑で、心理的・社会的要因への配慮も重要であり、他の退行期疾患を拾い上げることも必要ですから、確かに対応は一筋縄ではいきません。また、医学の進歩に伴い、多くの薬剤が臨床に導入されてきており、それらの特徴を把握することも容易ではありません。さらに、ホルモン補充療法の乳がんリスクに代表されるように、パラダイムシフトが起こっているものも多々あります。しかし、これまでいわゆる更年期の外来診療における各種診断・治療を広く系統的にまとめた書籍は少なく、ガイドラインもありませんでした。そのため、更年期女性を治療しようとする医師からは、よくわからなくて怖いという声まで聞かれました。
そこで今回、我々東京歯科大学市川総合病院の約15年の経験の蓄積を「TDC(Tokyo Dental College)」メソッドとしてまとめ、更年期外来診療マニュアルを作成することを企画しました。明日からの外来にすぐに役立つ構成で、最新の情報を基に、基本的な考え方から治療の応用までわかりやすく解説しています。本書を通読することで、更年期障害への対応は決して怖くないことを理解していただけると思います。
人生90年にもなろうとする日本人女性にとって、更年期はその折り返し地点です。本書が更年期外来における対応のレベルアップに貢献し、ひいては日本の中高年女性のQOL向上につながることを期待しています。