【質問者】
川口 巧 久留米大学医学部内科学講座消化器内科講師
【高度肝線維化が疑われる症例は発癌リスクが高く,予後も不良であり専門医へ紹介する】
国内には約2200万人のNAFLD患者が存在し,全例を肝臓専門医へ紹介することは非現実的です。米国のメタ解析では肝線維化進行と予後が相関しました。肝線維化ステージは0~4の5段階に分類されますが,ステージ2から肝疾患での死亡リスクが指数関数的に上昇します。肝生検で診断したNAFLDにおける発癌リスクを検討すると,PNPLA3遺伝子型GGホモ接合型あるいはステージ3/4です。したがって,肝硬変や肝癌の家族歴を有する例,高度肝線維化を疑う例を専門医へ紹介します。ALT値の高低は線維化進行度と関係しない点は念頭に置いておきます。
グローバルの方向性に従い,まずは簡便なFIB-4 indexの計算をお勧めします(日本肝臓学会のホームページで計算可能)。FIB-4 index 1.3未満:ステージ3以上の可能性はきわめて低いので,かかりつけ医で経過観察して頂きます。FIB-4 index 2.67以上の例:40~80%の例がステージ3/4に該当するため,直ちに専門医へ紹介します。FIB-4 index 1.3~2.67の中間群:AST/ALT比0.8以上,肝線維化マーカーである4型コラーゲン7S 5.5 ng/mL以上,Mac-2bpGi 1.0以上,フィブロスキャンで10kP以上のいずれかに該当する際は専門医への紹介を考慮します。MRエラストグラフィは肝線維化の最も正確な画像診断であり,3.6kPa以上は専門医へ紹介すべきですが,保有する施設はまだ少ないです。また,免疫グロブリンG(immunoglobulin G:IgG)高値例では自己免疫性肝炎の鑑別が,やせ型の例や難治例の中には内分泌異常,栄養障害,薬剤(タモキシフェン,メトトレキセート,バルプロ酸,向精神薬など)による例もあり,肝臓専門医への紹介を検討します。
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