【超音波の減衰を利用し肝の脂肪化を測定,鉄やT1値の影響を除外した純粋な脂肪成分の測定が可能なアプリケーションが登場しつつある】
超音波検査における肝脂肪の定量的評価方法として,近年,減衰を利用した測定法があり,CAPがあります。フィブロスキャン(エコセンス社)の肝硬度測定と同時に計測可能なアプリケーションです。超音波の減衰を利用した測定法にはほかにATI(attenuation imaging)(キヤノンメディカルシステムズ),ATT(attenuation)(日立製作所)などもあります。いずれも直接,脂肪を測定するのではなく,超音波が脂肪化により減衰することを利用した測定法です。
CAPの脂肪化のカットオフ値は施設間で一定ではありません。病理組織を用いたとしても,サンプリングエラーも大きく,また,皮下脂肪の影響を受けてしまう可能性もあります。概して,230 dB/mから300dB/mまでありますが,240dB/mあたりが1)2),対象が日本人の場合には妥当なカットオフ値と言えます。ただし,フィブロスキャンおよびCAPに関しては皮下の厚さによりプローブを適宜使いわける必要があります。ATIにもカットオフ値がありますが測定原理の違いより表示単位が異なります。
NASH(non-alcoholic steatohepatitis)やNAF LD(non-alcoholic fatty liver disease)が注目されており,その脂肪化の定義は組織学的に5%以上の肝細胞の脂肪化とされます。従来の30%以上を脂肪肝としていた概念とは異なっています。肝生検のみが正確な脂肪化を判断可能とされているものの,サンプリングエラーの問題と侵襲性から,脂肪肝を疑っての肝生検は回避されることも稀ではありません。
CTにおいても30%以上の脂肪化に関しては,肝臓と脾臓のCT値比から鑑別可能ですが,それ以下の脂肪化の定量に関しては限界があり,X線被曝の問題もあります。
X線被曝のないMRIは直接脂肪の定量が可能です。MR spectroscopy(MRS)は脂肪の各分子の各スペクトラムを直接測定し,定量化が可能ですが,最近,PDFF(proton density fat fraction)という鉄やT1値の影響を除外し,純粋に脂肪成分を測定可能なアプリケーションが登場しました3)。MR elastographyと併せて使用することで,今後,NASHの新薬の治験において肝生検の代替え検査の立ち位置となりつつあります。
画像診断における脂肪化は肝臓全体に占める脂肪量を求めるものですが,組織では肝細胞の脂肪化の割合を求めていて,乖離があることに注意が必要です。
【文献】
1) Karlas T, et al:J Hepatol. 2017;66(5):1022-30.
2) 斎藤 聡:インナービジョン. 2018;33:112-4.
3) Imajo K, et al:Gastroenterology. 2016;150 (3):626-37.
【回答者】
斎藤 聡 虎の門病院肝臓内科医長