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ユニバーサル・ヘルス・カバレッジとエコヘルス [プラタナス]

No.4701 (2014年05月31日発行) P.1

門司和彦 (長崎大学大学院国際健康開発研究科教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-28

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昨年9月に安倍晋三首相はランセット誌に政策表明を寄稿し、日本はアフリカや東南アジアのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成を支援し、グローバルヘルスを主要な外交戦略にすると表明した。

UHCは「すべての人々に健康を(Health for All)」への再挑戦である。WHOは、その目標を「すべての人々が医療サービスを利用することができ、それによって財政的困難に陥らないようにすること」としている。UHCは2015年以降の持続可能な開発目標(SDGs)の主要項目になると思われる。

UHCの分野で日本が世界に誇れる点は2つある。1つは医療サービスの質の高さであり、もう1つは比較的平等な社会が維持されている点である。国民皆保険制度はこの条件下で効果的に機能し、この条件を強化し、日本人の平均寿命は延伸した。

しかし、日本の特徴は世界的展開においては弱点にもなる。UHCは日本のような条件が揃う国では実現可能だが、世界の貧富の差は非人道的に大きく、日本の成功例を簡単に輸出できない。したがって、それぞれの国でUHCをどのように達成するかが問題となる。結果的に金持ちだけが最先端医療を享受することに手を貸すのでは、UHCの理念に反する。今後も高齢化が進行する日本では、満足のいく医療サービス供給の持続可能性が危ぶまれている。他のアジア諸国でも日本と同様の人口状態がすぐに訪れる。何らかの形で医療の需要増加を阻止しなければ、UHCは機能しない。

エコヘルスという考え方は、環境と健康との繋がりに焦点を当てることにより、医学以外の分野に健康領域での協働を促すものである。それは、環境学や生態学にとどまらず、自然科学、社会科学、人文科学の各分野の協働による総合学問の創出を目指す。また、研究者や専門家だけではなく、地域社会の様々な人々を含めた超学的(transdisciplinary)アプローチにより、社会が実現可能な解決策を模索する。エコヘルスアプローチにより、社会の疾病負担を減らすことが可能であり、各国におけるUHC達成の条件を整えることが可能となる。

地球環境変化の健康影響が問題視される21世紀にあって、UHCを達成し、その持続可能性を高めるためには、エコヘルスアプローチを強化して疾病負担を減らしていかなければならない。そして、UHC達成のために、医学は「君臨する時代」から「他分野との協働・統合を目指す時代」になった。

長崎大学大学院国際健康開発研究科教授 門司和彦(もじ かずひこ

1971年東大保健学科卒。87年長崎大助教授、91年ハーバード大武見フェロー、ケンブリッジ大チャーチルカレッジ准フェロー、99年長崎大教授、2002年熱帯医学研究所教授、06年熱帯感染症研究センター長、総合地球環境学研究所教授を経て、07年より現職。日本熱帯医学会理事長、J-EcoHealth代表。

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