【急増するマダニ媒介感染症により急がれる治療法の確立】
日本紅斑熱は1984年に発見されたわが国固有の紅斑熱群リケッチア感染症であり,近年では報告数が年間300例を超え,臨床所見がきわめて類似するつつが虫病にせまる勢いである。Rickettsia japonicaを保有するマダニに刺咬されて感染する。発熱・発疹を認めた症例に本症を疑えば,「刺し口」が診断のための重要な所見となるが,これまでの報告からは66%にとどまる。当初,発生地は関東以西の比較的温暖な太平洋沿岸に多かったが,東日本に拡大しつつある。R. heilongjiangensis,R. helveticaおよびR. tamurae等の類縁病原体も確認されている。
確定診断のためには,最寄りの保健所に相談した上,検体(血液・刺し口痂皮等)を提出する必要がある。治療はテトラサイクリンが有用とされるが,つつが虫病に比べ投薬後効果が表れるまでに時間を要することが知られる。一部は重症化することもあり,テトラサイクリンに加えニューキノロンを追加投与することが救命のために有効であるとして推奨する専門家も多い。
しかし,日本紅斑熱に対するテトラサイクリンとニューキノロンの併用療法の有効性に関しては今後の解析が待たれる。詳細は,最近まとめられた「リケッチア症診療の手引き」を参照されたい。
【参考】
▶ 岩崎博道:リケッチア症診療の手引き. 福井大学医学部附属病院医療環境制御センター・感染制御部. 2019.
[https://www.hosp.u-fukui.ac.jp/wp/wp-content/uploads/r-tebiki20190422.pdf]
【解説】
岩崎博道*1,重見博子*2 福井大学医学部附属病院 *1感染制御部・感染症膠原病内科教授 *2呼吸器内科