膝関節には主たる靱帯組織として,内側側副靱帯(medial collateral ligament:MCL),前十字靱帯(anterior cruciate ligament:ACL),後十字靱帯(posterior cruciate ligament:PCL),後外側支持機構(posterolateral structures:PLS)が存在し,各靱帯損傷の特徴を把握しておくことが重要である。本稿では頻度が高く,機能不全による症状が出現しやすいACL損傷を中心に述べる1)~5)。
ACLは膝関節の中心に存在し,大腿骨に対する脛骨の前方・回旋運動を制御している。問診にて受傷機転,既往歴,身体活動性を聴取する。視診および触診では,合併損傷に注意する。
スポーツにおけるジャンプ後の着地や走行中の急停止,方向転換などによる非接触型の損傷が多い。受傷時何かが切れた音(ポップ)を感じることが多く,受傷後は膝関節内が腫れ,関節穿刺にて血性関節液を認める。
Lachmanテストが最も信頼性が高い徒手検査である。Pivot shiftテストおよびNテストは,大腿骨に対する脛骨外側顆の前方亜脱臼を再現するが,急性期には筋性防御のために検査が困難なことが多い。単純X線にて裂離骨折(脛骨顆間隆起骨折)の有無やSegond骨折(外側関節包の脛骨付着部裂離骨折)の合併を確認する。MRIは,半月板や軟骨損傷および骨挫傷の把握に有用である。
ACLは治癒能力に乏しく,保存療法ではその機能は改善しないため,膝前方不安定性が残存する可能性が高い。ACL損傷では,スポーツ復帰の希望など各々の身体活動性,不安定性の程度,合併損傷の有無により手術適応を決定する。膝動揺性検査装置やストレスX線は,膝前方安定性の定量化に用いられる。MRIは,関節内構成体の損傷の確認に有用である。外傷後の膝関節周囲における炎症の沈静化のため,RICE(R:安静,I:アイシング,C:圧迫,E:患肢挙上)を指示する。保存療法や手術までの期間は,膝軟性および硬性装具を用い二次損傷を予防する。
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