安倍政権が医療を成長戦略として掲げた時から、嫌な予感はしていた。公的支援が充実している日本で医療費の増加が国の発展につながるのであろうか? 国民医療費は2012年度の39.2兆円から2025年には52.3兆円に増加すると予想されているが、増加分は誰が負担するのだろうか? 国や健保組合にはもう余力がないはずだと思っていた矢先に、混合診療の拡大を打ち出した。
医療が産業となるためには、増大した医療費を公的負担していては、“タコが自分の足を食う”状態となり、経済は発展しない。医療費の増加対策としてとりうる国の選択肢は、患者負担を増やすことや公的医療保険給付の対象範囲の縮小などが一般的に考えられるが、これらを実現するためにも混合診療解禁は必須条件となる。自己負担が増加し、オプションの医療が自費になると、貧富の差で受けられる医療が変わってくる可能性がある。我々も患者から求められる本当に価値のある医師になることが大切だろう。
さらに我々にとって厳しいのは、2030〜40年問題と呼ばれる高齢者が実質減少する時期である。高齢者は「団塊の世代」が65歳以上となる2015年には3395万人となり、75歳以上となる2025年には3657万人と増加するが、その後2042年の3878万人をピークに減少に転じると推計されている。2030年代後半からは医療を必要とする高齢者が減るが、医師数は増え続けるので、医師1人当たりの収入は減るだろう。
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