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原発性胆汁性胆管炎[私の治療]

No.5023 (2020年08月01日発行) P.37

竹山康章 (福岡大学病院消化器内科准教授)

向坂彰太郎 (福岡大学医学部 総合医学研究センター教授)

登録日: 2020-08-03

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  • 原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis:PBC)は,慢性進行性の胆汁うっ滞を呈する肝疾患である。中年以降の女性に好発し,皮膚瘙痒感で初発することが多い。病因はいまだ解明されていない。しかし,慢性甲状腺炎,シェーグレン症候群,関節リウマチ等の自己免疫性疾患や膠原病を合併するため,免疫系の関与が推定されている。臨床上,症候性PBCと無症候性PBCに分類され,皮膚瘙痒感,黄疸,食道胃静脈瘤,腹水,肝性脳症など,肝障害に基づく自他覚症状を有する場合は症候性PBCと呼び,これらの症状を欠く場合は無症候性PBCと呼ぶ。近年のPBC症例は,血清抗ミトコンドリア抗体(anti–mitochondrial antibody:AMA)陽性で早期に診断される機会が多く,また内服加療により病状の進展が抑えられ,肝硬変には至っていない患者も多い。それゆえ,2016年より原発性胆汁性“肝硬変”から原発性胆汁性“胆管炎”に病名が変更された。ただ,予後がよくなったと言えども,高度の黄疸を伴う症例や肝不全症例は予後不良であり,現時点では肝移植しか治療法がない。

    ▶診断のポイント

    血液生化学検査で肝胆道系酵素(ALP,γ-GTP)の異常を契機に診断されることが多い。血清学的にIgMの上昇,AMA特にAMA-M2抗体陽性が診断のポイントである。ただし,AMA陰性のPBC症例が10%程度存在する。肝生検組織では,PBCに特徴的な所見(慢性非化膿性破壊性胆管炎,胆管消失など)を認める。多く(7~8割)の症例は,病初期の無症候性PBCの時期に診断され,治療により無症候のまま長い期間経過する。一部のPBC症例は,血清学的検査にて以下のような病状の進展具合が予想されることがわかってきた。すなわち,抗セントロメア抗体(discrete-speckled型の抗核抗体)陽性のPBCは,予後はよいが食道静脈瘤など門脈圧亢進症状を伴うことが多く,抗gp210抗体(核膜型の抗核抗体)陽性のPBCは,黄疸を伴い肝不全に至る,というように,病型の異なるPBC群があることが示されている。

    ALTの異常高値を伴う場合などは,PBCと自己免疫性肝炎とのオーバーラップ症候群(肝炎型PBC)の鑑別が必要なため,肝臓専門医へコンサルトして肝生検などで診断を行う。肝炎型PBCは,自己免疫性肝炎に沿って治療を行う。

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