先天性消化管疾患は,食道から肛門まで閉鎖・狭窄・重複症など胎生期の発生異常の結果発症する。本稿では,小児外科疾患の中でも中長期予後が問題となる食道閉鎖症,直腸肛門奇形に関して述べる。
食道閉鎖症では80%以上の症例で食道は盲端となり,気管食道瘻を呈する。出生後速やかに診断し,手術を含めた治療を開始することが重要となる。合併奇形の頻度も50~70%と高く,先天性心疾患合併は30%以上,染色体異常症も6~10%にみられる。
わが国での食道閉鎖症の出生前診断率は43.5%とされている。羊水過多・胎児胃泡の同定困難・食道盲端の描出などが診断根拠になる。出生前診断されていない場合には,出生後の泡沫状唾液の嘔吐や胃管が挿入できないこと(coil up sign)で気づかれる。病型としてGrossの5分類が代表的であるが,Kluth1)が報告したように90種以上の亜型も存在するため,術前には気管支鏡で気管食道瘻の位置や数を含め病型を確定する必要がある。
肺合併症を防ぐためにも,合併疾患の検索後に早期に根治術を施行する。出生時体重1500g以下の場合には,出生直後には胃瘻造設・気管支鏡による病型診断のみとし,胃瘻経由の栄養によって体重増加を待つ。
基本術式は右胸膜外アプローチで一期的吻合術を行う。術中の換気の安定化,術後合併症への役割は大きく,胃瘻造設を標準としている。吻合部には栄養投与とステント目的に,transanastomotic-tubeを挿入する。術中所見で一期的吻合が困難な場合には,Foker法などの延長術で二期的に吻合する。
術後約1週間で食道造影検査を行い,縫合不全や狭窄のないことを確認してドレーン抜去,経口摂取を開始する。
根治術として一期的吻合が可能な症例では,胸腔鏡下食道食道吻合術も可能であるが,術後縫合不全などの合併症を考慮した場合には,胸膜外アプローチが有利である。80%以上のGross C型では,上下の食道盲端間距離は短く一期的吻合が可能である。Gross A型で食道盲端間距離が長い場合には,胃瘻のみ生下時に造設し,食道延長術後に食道食道吻合術を行う。食道食道吻合術が困難な症例では,胃や結腸を用いた再建術を施行する。
出生後は,唾液や吐物を誤嚥するため頭位挙上として口腔内・食道盲端の吸引が必要で,状態によって気管内挿管呼吸器管理とする。縫合不全・吻合部狭窄予防のため術後後屈位は禁止し,吻合部安静のため3~5日間は鎮静・筋弛緩のもとに挿管・呼吸器管理としている。
胃食道逆流症が高率に合併し術後吻合部狭窄の原因となるため,術後H2受容体拮抗薬を投与する。
気管食道瘻の位置によっては,開胸ではなく頸部アプローチによる根治が可能な症例が存在する。
過緊張な吻合は縫合不全・膿胸の原因となるため,術前の病状診断を慎重に行い,症例によっては木村法などの段階的手術を考慮する。
【文献】
1) Kluth D:J Pediatr Surg. 1976;11(6):901-19.
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