【質問者】
小関正博 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科
【脂肪酸はNAFLDの成因のひとつであり,NAF LD outcomeであるCVD発症にも寄与する】
NAFLD(「非アルコール性」の飲酒量は,エタノール換算で男性30g/日,女性20g/日未満)は,肝細胞内に中性脂肪が過剰蓄積することで生じます。
その成因には,肥満・内臓肥満,糖尿病,脂質異常症,高血圧,高尿酸血症,筋肉低下などに伴うインスリン抵抗性が関与しています。これらによって脂肪組織中の中性脂肪の加水分解が引き起こされ,遊離脂肪酸の放出量が増加し,肝細胞に取り込まれる遊離脂肪酸の量が増加します。これが脂肪肝につながります。同様に,食事由来の脂質増加,肝臓への糖質流入増加に伴う肝細胞内での脂肪酸合成促進,肝臓内での脂肪酸のβ酸化の低下も脂肪肝の要因とされます。
その他,肝臓のapoB100合成低下,ミクロソームトリグリセリド転送蛋白(microsomal triglyceride transfer protein:MTP)活性低下などに伴う超低密度リポ蛋白質(very low-density lipoprotein:VLDL)合成障害,肝臓からのVLDL放出低下などの要因が組み合わさることで,NAFLDは引き起こされます。
脂肪酸代謝の過剰・異常によって生じる疾患であるため,脂肪酸はNAFLDの成因の主要物質であると言えます。なお,肝臓への脂肪酸の流入増加によるβ酸化の亢進がもたらす酸化ストレス〔活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)〕の増加は,NAFLDから脂肪肝炎への進展に寄与します。
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