薬物性肝障害は一般に中毒性と特異体質性に分類され,後者は代謝性とアレルギー性に区分される。また,特定の薬物に起因して,脂肪性肝炎,肝腫瘤形成,類洞閉塞症候群(sinusoidal obstruction syndrome:SOS)など特異な病態を呈する特殊型と,B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)など内因性ウイルスの再活性化に起因する肝障害も,薬物性肝障害の範疇に加えられる。治療の基本は原因となる薬物の中止であるが,特殊型以外の一般型では,特異体質アレルギー性で肝壊死,胆汁うっ滞が遷延する場合と,一部の中毒性肝障害が治療の対象になる。
診断に際して最も重要なのは,薬物服用および中止と肝障害発現との時間的関連である。薬物性が疑われる場合は,DDW-J 2004薬物性肝障害ワークショップのスコア法を用いて,肝細胞障害型,胆汁うっ滞型,混合型に分類し,総計点から可能性を評価する1)。リンパ球刺激試験(DLST)と肝生検の所見も診断の参考になる。薬物性肝障害は自己免疫性肝炎との鑑別が困難な症例が多く,特に肝生検は可能な限り実施すべきである。最終的には,被疑薬の薬理作用と市販後調査での肝障害の発症実績を参考にして2),診断を確定する。被疑薬の再投与は行うべきでない。しかし,偶然の再投与後の臨床経過は重要な情報となる。
まず,被疑薬を中止する。その後,肝障害が軽快する場合は,特に治療の必要はない。しかし,一般型のうち特異体質アレルギー性では,肝炎ないし胆汁うっ滞が遷延する場合と,肝炎が重症で急性肝不全への移行が危惧される場合は,内科的集学的治療の適応になる3)。また,中毒型ではアセトアミノフェンの大量投与,特殊型では免疫チェックポイント阻害薬ないしHBV再活性化による肝障害の治療が重要である。なお,病型を問わず,急性肝不全昏睡型と診断された場合は,人工肝補助を実施するとともに,肝移植の適応を検討する。
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