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ネフローゼ症候群[私の治療]

No.5033 (2020年10月10日発行) P.45

飯島一誠 (神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野教授)

野津寛大 (神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野特命教授)

登録日: 2020-10-13

最終更新日: 2020-10-07

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  • 高度の持続性蛋白尿と続発する低蛋白血症により特徴づけられた病態診断名で,しばしば浮腫,脂質異常症を伴う。わが国では小児10万人当たり年間6.5人が発症するとされ,浮腫・乏尿などの症状で発見されることが多い。約90%は原因不明の一次性(特発性)ネフローゼ症候群であり,その約80%が微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)である。一次性ネフローゼ症候群の80~90%はステロイド感受性で,約10~20%がステロイド抵抗性である。ステロイド感受性ネフローゼ症候群の40~50%が頻回再発型ネフローゼ症候群(FRNS)やステロイド依存性ネフローゼ症候群(SDNS)となる。ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群(SRNS)は腎不全に進行する可能性がある。

    ▶診断のポイント

    病型に合わせた治療法を選択するために,ステロイドに対する反応性や免疫抑制薬に対する反応性等を正確に評価することが重要である。病型診断については,成書を参照されたい。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    持続的な血尿,高血圧,腎機能低下,低補体血症,1歳未満の発症などのMCNS以外の組織型を疑わせる所見がある場合には,腎生検を行い,組織診断を確認した上で治療を開始する。上記のような所見がない場合には,腎生検を実施せずステロイド治療を開始するのが一般的である。

    FRNSあるいはSDNSに対しては,再発を抑制しステロイドの減量・中止を図るために免疫抑制薬を投与する。免疫抑制薬投与中あるいは投与後にFRNSあるいはSDNSを呈する難治性FRNS/SDNSに対しては,リツキシマブの投与を考慮する。SRNSに対しては,経口ステロイドに加えて,シクロスポリンあるいはシクロスポリン+ステロイドパルス療法を行う。

    現時点で,小児のネフローゼ症候群を治癒に導く治療法はなく,種々の治療薬を,できる限り永続的な副作用を残さぬように使用しつつ,病勢が衰えるのを待つのが治療の原則である。なお,FRNS,SDNS,難治性FRNS/SDNS,SRNSについては,経験豊富な小児腎臓病専門医による治療が望ましいと考える。

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