監修: | 小川智也(埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科 教授,血液浄化センター長) |
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編集: | 宮本雅仁(医療法人社団善仁会 横浜第一病院 バスキュラーアクセスセンター) |
編集: | 石田容子(医療法人徳洲会 介護老人保健施設 シルバーホームいずみ) |
判型: | A5判 |
頁数: | 272頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2022年11月19日 |
ISBN: | 978-4-7849-4780-5 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
●全身状態不良,高齢,認知症,血管荒廃,担癌…。AVFやAVGが難しい症例でのベストチョイスとしてのカテーテル透析について詳述しました。
●感染や血栓をいかに防ぐか,自己抜去防止の工夫など,マネジメントのコツを経験豊富な執筆陣が解説。
●透析医療における幅広いニーズにこたえる1冊です。
目次概要
1章 カテーテル透析の歴史
2章 留置カテーテル挿入法と周術期管理
3章 カフ型カテーテルの活用と管理
4章 透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン(五訂版)の解説
5章 留置カテーテルの分類と特徴
6章 各種カフ型カテーテル
1章 カテーテル透析の歴史
1.海外と日本におけるカテーテル透析のあゆみ 【宮田 昭】
2.バスキュラーアクセスにおける透析カテーテル選択の歴史 【大﨑慎一】
2章 留置カテーテル挿入法と周術期管理
1.留置カテーテルの安全な挿入法・危険な挿入法 【深澤瑞也】
2.非カフ型カテーテルとカフ型カテーテルの適応
1)非カフ型カテーテル留置での注意事項 【末光浩太郎】
2)カフ型カテーテル留置での注意事項 【清水泰輔,佐野達郎,安部 望,肥田 徹,小川智也】
3.非カフ型カテーテル挿入術の実際 【小島茂樹,櫻田 勉】
4.カフ型カテーテル挿入術の実際
1)右内頸静脈からのアプローチ 【青柳 誠】
2)左内頸静脈からのアプローチ 【二瓶 大】
3)大腿静脈からのアプローチ 【笹川 成】
5.カフ型カテーテル入れ替え術 【野口智永】
6.カフ型カテーテル抜去の適応と実際 【新宅究典】
7.合併症の予防と早期発見
1)出口部評価スケールの活用 【柴原 宏】
2)非カフ型カテーテルに関する合併症 【柴原 宏】
3)カフ型カテーテルに関する合併症 【柴原 宏】
8.術前・術後管理 【櫻間教文】
9.各留置カテーテル使用方法応用編 【佐々木 茂】
3章 カフ型カテーテルの活用と管理
1.臨床使用の実際
1)在宅血液透析での使用 【松岡一江,池田 潔】
2)bridge useによる管理 【小鹿雅隆】
2.地域連携(施設連携)
1)挿入施設から維持施設への情報提供 【内野 敬】
2)維持施設から挿入施設へ相談すべき場合 【飯田潤一】
3)カフ型カテーテル管理連携クリニカルパス 【内野 敬】
4章 透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン(五訂版)の解説
1.五訂版の概要とその目的 【森兼啓太】
2.五訂版の要点と臨床現場での活用法 【石田容子】
3.〈Option〉カフ型カテーテルの時期に応じた管理と消毒 【齋藤 慎】
5章 留置カテーテルの分類と特徴
1.非カフ型カテーテルの先端形状による分類と特徴 【髙橋良光】
2.カフ型カテーテルの脱返血部位の流体的評価 【金山由紀,佐々木裕介,清水泰輔,小川智也】
3.各疾患に対する使用方法
1)心負荷軽減のための使用 【佐藤和宏】
2)四肢血管荒廃のための使用 【岡 香奈子】
3)悪性腫瘍の罹患患者への使用 【宮本雅仁】
4)超高齢患者の透析導入での使用 【柴原 宏】
5)認知症患者への使用 【宮本雅仁】
4.知っておきたい留置カテーテルに関する知識
1)挿入時に知っておきたい超音波活用法 【小林大樹】
2)カテーテル感染と超音波装置 【小林大樹】
3)脱血不良や再循環の評価と対応 【末木志奈】
4)閉鎖回路による留置カテーテルの使用 【長谷川総子,小川智也】
6章 各種カフ型カテーテル
1.バイオ・フレックス テシオ カテーテル(株式会社 林寺メディノール・株式会社ハヤシデラ) 【本宮康樹】
2.スプリット ストリーム カテーテル(株式会社 林寺メディノール・株式会社ハヤシデラ) 【菅生太朗,小藤田 篤】
3.UKカフ付カテーテル(ニプロ株式会社) 【藤井 恵】
4.パリンドローム プレシジョン(コヴィディエンジャパン株式会社) 【中村元信】
5.セントロスフロー(メリットメディカル・ジャパン株式会社) 【四宮敏彦】
6.グライドパス(株式会社メディコン) 【山本脩人】
血液透析におけるバスキュラーアクセスは透析患者の命綱と言われるほど重要であり,日本では患者全体の9割以上でAVF(自己血管使用皮下動静脈瘻),AVG(人工血管使用皮下動静脈瘻),動脈表在化が選択されてきました。一方で,バスキュラーカテーテルは緊急時のアクセスとして認知されていますが,中長期のアクセスとしては望ましくないものとして,常に敬遠される立場であったとも言えるでしょう。
近年,透析技術が進歩するとともに,社会的にも透析医療のニーズが広がりました。その結果,全身状態が不良な患者や高齢患者,また担癌患者など,バスキュラーアクセスの設置が難しい症例が以前よりも増えてきました。以前のように,AVFの設置だけでは解決できない時代が到来したと感じています。これまでカフ型のバスキュラーカテーテルは最終手段として恒久的使用が前提とされていましたが,様々な患者の容態に合わせた使用法が可能であることから,「bridge use」と言われる使われ方や,慢性維持透析自体を試験的に導入するための使われ方など,使用方法も変容してきました。そのニーズの進化は非常に速く,バスキュラーアクセスのガイドライン等が追いついていないため,維持透析を提供されている医療現場では時に困られているのではないかと思われます。カフ型カテーテルをはじめとした透析用留置カテーテルに関する書籍は乏しく,カテーテル自体が透析現場で敬遠されやすいという状態です。そこで,こうした課題解決を願って,本書の企画に至りました。
バスキュラーカテーテルを上手に使われてきた経験豊富な先生方に実際の使用法などをご提示頂くことで,臨床現場でお困りの際に参考にして頂けるのではと期待しています。もちろん,完全なガイドラインが存在しない中での執筆者の経験や気づきを記したものであり,様々な考え方が含まれていると思います。読者の皆様には,より良いカテーテル使用を検討するきっかけになればと考えます。
留置カテーテルに関する検討はすでに出尽くしたと言われることがありますが,これからの透析医療における幅広いニーズに応えていくために,今の時代に合った検討が行われなければなりません。本書がバスキュラーカテーテルのバイブルとして,皆様方の臨床現場でご活用頂けることを願っています。