編著: | 春口洋昭(飯田橋春口クリニック 院長) |
---|---|
判型: | B5判 |
頁数: | 264頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2022年03月20日 |
ISBN: | 978-4-7849-4910-6 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版、動画が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
I章 透析中に気づくトラブル
1 狭窄音
1)治療の必要あり
2)治療の必要なし
2 脱血不良
1)スリルは良いが,脱血不良を呈する
2)狭窄が原因
3)血圧低下,脱水など
4)針先が狭窄部や分岐部に当たる
5)グラフトの脱血不良
3 静脈圧上昇
1)返血側中枢の狭窄
2)過剰血流
4 再循環
1)血流量低下
2)見逃しやすい症例
5 止血不良
1)内圧上昇:PTAで対応
2)内圧上昇:グラフトバイパスで対応
3)穿刺部の皮膚の状態による止血不良
6 シャント血栓・閉塞
1)部分閉塞:シャント血流はある
2)完全閉塞:AVF
3)完全閉塞:AVG
4)慢性非血栓性閉塞
7 穿刺困難
1)内針が入りにくい
2)外筒が進まない・進みにくい
Ⅱ章 患者に生じるトラブル
1 上肢の腫脹
1)上肢全体の腫脹
2)前腕や手指の腫脹
2 腕や手の痛み
1)血管痛
2)手の痛み:スチール症候群以外
3)手の痛み:スチール症候群
3 瘤
1)シャント瘤
2)外科手術を要した症例①
3)外科手術を要した症例②
4 感染
1)グラフト感染:全抜去
2)グラフト感染:全抜去、動脈結紮
3)自己血管の感染
Ⅲ章 診断・対応に苦慮した症例
1 VA治療を繰り返した結果,上大静脈症候群を呈した血液透析患者の1例
2 過剰血流治療目的で左肘部内シャント閉鎖術を施行した翌日,術側上肢に重度の浮腫を発症した1例
3 塞栓部位が通常とは異なる脱血不良例/原因が多数存在したカフ型カテーテル脱血不良例
コラム
頻回に見るから気づかないもの
シャント外来の効用
シャント閉塞治療,今昔
穿刺あれこれ
ソアサム症候群
フィードバックと想像力
このテキストを手に取って頂いているのはどんな方でしょうか? 外科医,内科医,放射線科医,それとも透析に従事しているスタッフの方でしょうか? それぞれ,違った思いで眺めているものと思います。外科医は「どんな治療法があるのか」,内科医は「外科医は一体なにを考えているのか」に興味があると思います。また透析スタッフは「トラブルをどのように考えればよいのか」など,さまざまな思いでご覧になっていると思います。
バスキュラーアクセス(VA)の治療法が悩ましいのは,VAの治療法の正解は決してひとつではないためです。もちろん,どんな病態にも,治療するにはいくつかの方法がありますが,VAほど治療法のバリエーションが広いものを私は知りません。
VAはAVF,AVG,カテーテル,動脈表在化などの形態があり,トラブルにも狭窄,閉塞,瘤,静脈高圧症など,さまざまな種類があります。治療に関しても,経過観察でよいのか?修復が必要なのか?血管内治療と外科治療のどちらを選択するのか?を迫られます。また,外科治療にしても,修復なのか?新たなアクセスの作製なのか?おそらく医師によって考え方が違います。みな,自分の持っている知識と経験を総動員して,ベストな治療法を考えます。しかし,自分の診断や治療法が正しかったかどうかについては,なかなか検証できません。
本書は,実際の症例をベースに編集致しました。患者を診察したとき,何を考え,どんな検査をするのか?その結果,どのように病態を把握するのか?ということを,経験豊富な執筆陣に1例1例解説してもらいました。
「なるほど,そのように考えて治療するのか」「いや,自分だったらほかの治療法を選択する」など,さまざまな感想を持つと思います。自分とは違う方法であっても,何かしら参考になることは多いと思います。
大切なのは,「治療の引き出しを多く持つ」ということです。本書を読んで頂き,この方法を試してみよう!と思ったら,ぜひ実践して下さい。そして,その方法が自分にとってスタンダードとなれば,治療法の選択の幅が広がります。
今までにないテキストに仕上がったと思います。ぜひ手に取って「目の前に患者さんがいる」という視点で,読んでみて下さい。実際に治療に携わらない内科の先生方や透析スタッフの方も,トラブルに対してどのように考えて治療方針を立てているかを知ると,VAのみかたが変わってくると確信しています。
2022年2月
飯田橋春口クリニック 春口洋昭