No.5034 (2020年10月17日発行) P.66
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2020-10-14
最終更新日: 2020-10-13
コンビニ袋が有料化された。安いものなので別に買ってもいいけれど、なんとなく心理的抵抗感がある。なので、エコバッグを持ち運んで使うようにしている。
しかし、どうしてエコバッグというのは、いまひとつデザインが不細工なんだろう。それに、自分で詰めると、レジの人にやってもらうより時間がかかってもたもたする。この前なんか、早くしようと清算前の商品をエコバッグに入れそうになって、あわや万引き犯になってしまうところだった。
エコバッグに入れにくい物もある。たとえばお弁当。入れられないことはないが、縦に入れるとおかずがごちゃごちゃになってしまう。特に悩ましいのが駅弁である。
出張帰りに、東京駅コンコースの「駅弁屋 祭」をよく利用する。全国の有名駅弁が並んでいてかなり楽しい。そこから新幹線のプラットフォームまで歩いて2~3分。
弁当を食べ終わったらすぐゴミにしてしまうのがわかっているのにコンビニ袋を使うのはなんだかなぁという気がする。だから、いつも「いりません」と言う。そして、弁当を水平に持ったまま移動。歩く姿がまぬけ感にあふれているような気はするが、いたしかたなし。
そうやって歩いていて、久しぶりにふと曾祖父のことを思い出した。といっても、会ったことはない。その昔、祖母に聞いた曾祖父の傑作なあだ名を思い出したのだ。
小学校の校長だったが、昔のことなので給食などない。毎日、風呂敷に包んだ弁当を持って通勤していた。その包みを両手で水平に持ちながら、厳格な教育者らしくそろそろと歩く。さて、その姿からついたあだ名は何だと思われます? こぼさないように歩いているからと「おかゆ弁当」。気の利いた悪ガキがつけたのだろうか。なんとも絶妙なネーミングで笑える。
高校生くらいまでは、同級生をあだ名で呼ぶことがよくあった。イヤリング好き女子は「イヤちゃん」とか、なんかいらんことをして「鉄砲で撃ったろか!」と怒鳴られた奴は「てっぽう」とか、由来を聞かないと絶対に意味不明なのもたくさんあった。
最近はあだ名がイジメにつながると心配されているそうだ。確かに、呼ぶ方は何気なく使っても、呼ばれる方が嫌なことだってあるだろう。でも「おかゆ弁当」みたいな高度なやつまでなくなったらちょっと寂しい。
なかののつぶやき
「昔は、長ずるにつれて幼名から大人の名前に変わるし、なんらかの別名を持つ人も多かったですよね。で、わたしも引退後の名前を考えてあって、禿心斎とかどうですかね。読みはもちろん『とくしんさい』。髪の毛がなくなっても、それを心から得心して受け入れている。なんとなくええおじいちゃんっぽい感じがしたりしませんか」