プラスミドDNAを用いたHGF遺伝子治療用製品の実用化に成功した実績があり、現在、阪大と共同で新型コロナ感染症予防のためのDNAワクチン開発を進めているバイオ製薬企業のアンジェスは11月9日、緊急記者会見を開き、先進的なゲノム編集技術を持つ米エメンド社を年内に100%子会社化すると発表した。買収金額は2億5000万米ドル(約262.5億円)。
エメンドは、対立遺伝子(アレル)の一方を傷つけることなく片方のみをターゲットにして編集する「アレル特異的ゲノム編集」を可能にする独自のヌクレアーゼを確立している。アンジェスは、こうした先進的なゲノム編集技術を用いた遺伝子治療用製品を実用化し適応症拡大を加速させるため、今回の買収に踏み切った。
アンジェスは、アレル特異的ゲノム編集による治療法開発の対象は「がん、神経系、眼科、皮膚科、免疫疾患、血液系、循環器系、治療法のない常染色体顕性遺伝子疾患、厳密な発現調節を要する遺伝子疾患」など多岐にわたるとし、1.1兆円の市場規模拡大を見込んでいる。
9日の会見でアンジェスの山田英社長は「(買収成立で)アンジェスは遺伝子治療プログラムと次世代ゲノム編集プラットフォーム技術を有する世界初の企業になる」と述べ、両社の経験・専門知識の統合によるシナジーを強調した。
米エメンド社買収の狙い(山田社長発表資料より)
①多くの適応症に対応できるゲノム編集技術の獲得 ②遺伝子治療プログラムとゲノム編集プラットフォーム技術を融合しグローバルマーケットを狙う企業になる ③ゲノム編集のヒトへの早期実用化