中央社会保険医療協議会は11月18日に開いた薬価専門部会で、2021年度薬価改定の議論に入った。診療側はこの中で、薬価改定について論じる前に、薬価調査の結果の妥当性を検証するべきだと、改めて慎重姿勢を表明。これに対して支払側は、政府が薬価改定の断行を決めた場合に備えて、検討を進めておくべきだと反論。議論は平行線をたどった。次回は関係団体からのヒアリングを行う。
厚生労働省は同日の部会に、21年度の中間年の薬価改定に向けた検討課題として、▶改定対象品目の範囲、▶市場拡大再算定や長期収載品の薬価引き下げといった実勢価改定と連動しない算定ルールまで適用するのか―などを提示。検討にあたって、▶国民皆保険の持続性、▶イノベーションの推進、▶国民負担の軽減、▶医療の質の向上―の4点に十分留意することも併せて求めた。
議論で診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、新型コロナウイルスの感染拡大で、「医科、歯科、調剤に加えて医薬品メーカーや医薬品卸も通常とは異なる対応を強いられており、補正予算による対応も現場には行き渡っていない」と指摘。こうした状況下で実施された薬価調査の精度に改めて疑問を投げかけ、「結果が個々の医薬品を適正に評価したものになっているのか、関係業界のヒアリングも踏まえた慎重な検討が必要だ」と述べた。有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)も、「従来とは異なる環境下で価格交渉をした影響が調査結果にどのように出ているか、改定に正しく活用できるものなのかの検証が必要。その上で、薬価調査を行うかどうかを慎重に議論するべきだ」と話した。
これに対して支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、21年度の薬価改定実施の是非は政府が判断するものだとし、「中医協は実施する場合にどのような形で行うかを粛々と議論していくべきだ」と反論。その上で、薬価算定ルールの適用範囲について、実勢価改定と連動しないルールまで含めるべきだと注文をつけた。