11月に入り、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規陽性者数が連日のように全国各地で過去最多を更新するなど、再び感染が拡大している。こうした状況を受け、最前線でウイルスに立ち向かう医療機関に対する補償制度が創設、運用が始まっている。本欄では医療機関が少ない負担で活用できる日本医療機能評価機構の「新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度」と日本医師会の「日本医師会休業補償制度」について解説する。
日本医師会が創設したのは、2021年1月から補償がスタートする「日本医師会休業補償制度」(下表)。日医会員が開設する医療機関の職員がCOVID-19に感染または濃厚接触者となり、医療機関が休業を余儀なくされた場合の逸失利益や、人件費・家賃などの継続費用を補償する日医会員向けの休業補償制度だ。対象は診療所と病院、検診センター、登録衛生研究所。日医会員が開設または管理する医療機関であれば、対象医療機関の要件は問わない。1法人で複数施設がある場合は施設単位で任意加入できる。
補償金は100万円。①当該医療機関に勤務する医療従事者がCOVID-19に感染もしくは濃厚接触すること、②当該医療機関で外部業者による消毒作業が行われること、③COVID-19感染(濃厚接触)および消毒作業の実施に伴い、休診日を含む連続7日以上閉院、もしくは外来を全面閉鎖すること―の3つの要件をすべて満たした場合に給付される。
募集は専用サイトを通じて行い、12月中に保険料を納入した場合に2021年1月から補償する。1月以降は毎月1日付で中途加入が可能となる。
保険料は1施設当たり年間4万8000円とされているが、同制度は厚労省「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業」の「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」の補助金対象となっているため、医療機関の保険料負担は実質ゼロとなる。
日医の今村聡副会長は11月25日の定例会見で同制度の概要を説明。「COVID-19が蔓延する中で、国民が必要な医療を適切に受けられるために、第一線で従事する医療機関を守ることが日医の使命」とした上で、「医療従事者の安心・安全に寄与することを切に願う」と同制度への加入を呼びかけた。
12月から補償がスタートしているのが、日本医療機能評価機構が運営する「新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度」。同制度はCOVID-19に対応する医療従事者がCOVID-19に罹患した場合に休業補償や死亡補償を行う。
制度の概要は下表の通り。同制度は、治療の最前線で使命をもって働く医療従事者が万一感染した場合であっても一定の収入が補償されることが必要との観点から、国からの補助金や日本医師会など医療団体からの寄付金を活用することで創設された。
保険期間は1年間で、日本医療機能評価機構HP内の特設サイトから申し込む形になる。医療従事者がCOVID-19に感染して労災事故と認定された場合、労災保険の給付に加え、4日以上の休業で20万円、死亡で500万円の補償金(保険金)が給付される。東京労働局によれば、感染時期に勤務実態があれば原則労災認定されるという。
1人当たりの年間保険料は、「新型コロナ対応医療機関A」(下表の類型1・2)の医療資格者と「対応医療機関B」(下表の類型3・4)の国の補助対象者は無料。対応医療機関Bの補助対象者以外の医療資格者と対応医療機関以外の医療機関(下表の類型5)の医療資格者は年間500円、医療資格者以外は年間1000円とされており、少ない負担で加入できる仕組みになっている。
保険期間は4期に分けて募集(下表)。第1期の募集は11月25日で終了しており、申込件数は5084施設(診療所:4569施設、病院:515施設)、対象人数は27万2354人となっている。2021年1月1日~2022年1月1日が保険期間となる第2期の募集は12月23日まで、最終第4期の申込期限は2021年2月15日とされている。
制度に加入できる医療機関は、①病院、②診療所、③介護医療院、④助産所、⑤訪問看護ステーション―の5つ。補償の対象者は、医療機関が加入している政府労災保険等で給付の対象となるすべての医療従事者。アルバイトやパートタイマー、臨時雇いも要件を満たせば補償を受けることが可能だ。