謹んで新年の御挨拶を申し上げます。2010年に始まったこの連載もはや6年目になりました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。さて今回は、最近の在宅医療・看取りの実態と今後の展望について私見を述べさせていただきます。
数年前、読売新聞本紙で在宅看取り数が公表された。しかしこれは新聞社が独自に行ったアンケート調査の集計報告であった。一方、2006年から在宅療養支援診療所制度が始まり、今年で10年目を迎える。それに登録した医療機関は毎年厚生労働省に1年間の看取りの実績を報告する義務がある。2年前、週刊朝日のムックがその届け出の数字をそのまま掲載したことで、各医療機関が届けた在宅看取りの数が世間に公表されることになった。昨年も最新版が公表されたが、週刊朝日が独自に割り出した「在宅看取り率」という数字までもが掲載された。
しかし、この算出方式には問題がある。施設での看取りがまったく評価されていないのである。実は施設での看取りは、居宅での看取りより難しいことがよくある。そこで施設での看取りを軽視するのはおかしいとの指摘をした。その結果、11月に発売された週刊誌本体では首都圏と大阪、兵庫県のみではあるが、看取りの実績が年間5件以上ある医療機関のみが、在宅看取り率は取り消した形で転載された。つまり、看取りの実績のある在宅療養支援診療所のリストが公表されたという形だ。
こうした動きに異を唱える人も当然いる。しかし私はかねてより診療所機能も病院機能と同様に情報公開すべきであると主張してきたので異論はない。むしろ医師会入会の有無や在宅療養支援診療所に登録していないが実績のある診療所、さらには看取りの実績のある訪問看護ステーションの公表なども視野に入れてもいいのではとさえ考えている。特別養護老人ホームや老人保健施設などの施設での看取りが謳われているが、実態調査を行うと施設間のばらつきが極めて大きい。やはり看取りの実態の公表は時代の流れだと思う。
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