未だ医師ではない医学生が臨床実習で医行為をするには、臨床実習前の全国試験に合格しなければならない。その試験は、82医学部医科大学が参加している医療系大学間共用試験実施評価機構が、16年前から自律的に実施している。試験内容は、コンピュータ出題による知識の試験(computer based testing:CBT)と、医療面接や診察技法の試験(objective structured clinical examination:OSCE)の2種類である。この試験は当初から国家試験にすべきとの声があったが実行に移されないままになっていた。しかし、ようやく2020年5月の厚生労働省医道審議会医師分科会報告書に、この試験を“公的化”することが明記され、法改正が進められている。“公的化”とは、国が行う準国家試験ないし一次国家試験というイメージであろうが、法整備上どのような呼称になるか未だ定まってはいない。
現在のCBTは、各大学のカリキュラムの進行状況に合わせるため、大学ごとに試験実施日が異なる。そこで、項目反応理論という試験理論を導入し、事前に難易度や識別力が測定された問題をプールしておき、そこから出題されるので、実施日や受験者が異なっても等質の試験が可能となっている。
また、OSCEでは、いくつもの小部屋が用意され、医学生が、初めの部屋に入ると「ここは外来診察室です。患者さんに医療面接をしなさい」という課題が示されていて、模擬患者をまねき入れ、来院理由や病歴を尋ねる。規定時間がきて次の小部屋に入ると「頭頸部の診察をしなさい」、その次は胸部診察を、さらに腹部診察、神経診察……と続く。各部屋には評価者がいて、学生の態度や実技を評価する。
この試験の公平性を確保するためのポイントは、評価者と模擬患者の2つ。評価者は、自大学教員のみならず、他大学から派遣された教員も評価に加わるので、評価の信頼性が確保される。模擬患者は、学生への対応を均一化するために、あらかじめ練習をしておかなければならない。
当機構では、評価の公平性を担保するためには模擬患者の標準化が喫緊の課題であるととらえ、大学教員と模擬患者団体の幹事からなる組織をつくって鋭意検討を重ねているところである。