昨年は何もかも新型コロナ一色の1年となりました。100年に1度というのはまさに誰も経験したことのないこと、病院長5年目の私にとってもまったく未曾有の経験です。そもそも、昨年までの大学病院を取り巻く諸問題は、地域医療構想2025とか働き方改革などであり、なかなか決定打がない中でのんびり進行中でした。
一方、当院の経営面では新病院の建設と病院再整備で苦しい台所事情が続き、ようやく一息つこうとしていた最中のコロナショックの到来です。当院は感染症指定病院でないため、第一波では非コロナの救急・重症例の受け入れで後方支援を行う方針でした。しかし、瞬く間に感染症指定病院の受け入れ(特に重症者)がオーバーフローし、県の行政と膝詰めの協議を経て4月3日から正式な入院受け入れを開始しました。感染病床がないため、1病棟(48床)を閉鎖しての受け入れであり、病床稼働率の低下は避けられません。
パンデミック期には、県内公立・公的病院など主要病院の病院長と医師会、行政が一堂に会して夜遅くまでコロナ医療体制について侃々諤々の議論を重ねました。それでも切羽詰まればこのような真剣な議論ができることがわかり、1つの大きな遺産になったように思います。
余談ですが、実は私は現職の大学病院長と県医師会の副会長を兼任しています。これは全国でもきわめて珍しい例だそうです。大学と医師会との関係は、新設医科大設立当時冷ややかなものだったと聞いていますが、それから平成、令和を経てずいぶん変化してきました。
今回、コロナの病院長会議で大学病院が大規模な受け入れを開始すると表明してから1つの流れができたのは事実で、この点において県医師会長が私を執行部に取り込んでおいたのは、まさに先見の明でした。
さて、その先のポストコロナの日常はどうでしょうか? しばらく忘れていた地域医療構想(2025のさらに先)では、各病院が社会的共通資本としての責務を果たしながら、機能分化と連携という劇薬を舐めながらでも確実に適応・進化を遂げなければ、生き残ることは難しいのでしょう。