プロフェッショナリズムという言葉は日本語にしづらいだけではなく、定義が難しい。「明確な定義はない」と結論づけている文献もある。そうは言っても言葉の定義は大事である。言葉を定義できないと議論がかみ合わない。議論ができないとなるとその言葉の概念はないに等しい。筆者は医学生の頃、様々な医学書の中でも「朝倉内科学」を読むのが大好きであった。その理由は、疾患や病態の定義・概念がまず書いてあるからである。短い文章で簡潔にその疾患や病態を表した定義・概念は頭の中に入りやすく、効率的に勉強するのに随分と役立った記憶がある。
少し話は逸れたが、とにかく、言葉を定義することはきわめて重要である。特に外来語は海外で生まれた概念をカタカナで表しているため、言葉を日本語で表現し、しっかりと定義することは、わが国においてその言葉の概念や関連問題について議論していくために必須である。
それでは、プロフェッショナリズムを日本語でどう表現するか。筆者は、複数の文献1)2)に基づいて「専門職主義」がプロフェッショナリズムの日本語訳として妥当ではないかと考えている。世の中には様々な「イズム(=主義)」が存在し、人々の考え方や行動の根本となっている。専門職主義に基づいて物事を考えたり、行動したりすることが我々専門職に求められている、と理解してはどうだろうか。
さらに、医療におけるプロフェッショナリズム(=専門職主義)をどう定義するか。筆者としては、やはり複数の文献3)4)に基づいて、以下のように定義することを提案したい。「医療におけるプロフェッショナリズムとは、理想とする医療のかたちとその提供方法、そのために医療専門職に求められる価値観とそれに関連した能力および具体的な診療・教育・研究活動を社会に宣言すること、そしてその実現へ向けて個人、チーム、組織として行動し、社会からの信頼を得ることである」。
令和3年、プロフェッショナリズムについての議論を深めていくため、その定義・概念についてのコンセンサスが形成されていくことを希望する。
【文献】
1) Wynia M:The Short History and Tenuous Future of Medical Professionalism. AMA, 2012.
2) Freidson E:Professionalism, The Third Logic. University of Chicago Press, 2001.
3) Wynia MK, et al:Acad Med. 2014;89(5): 712-4.
4) Lesser CS, et al:JAMA. 2010;304(24): 2732-7.