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コロナだからこそピンチをチャンスに[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.85

髙橋和久 (順天堂大学医学部附属順天堂医院院長・呼吸器内科学主任教授 )

登録日: 2021-01-04

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日本における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)陽性者数は、緩やかに減少しやや落ち着きを取り戻しつつあります。しかし、世界に目を向けると感染者数、死亡者数の増加は止まっていません。南アジア、南米、米国における流行の拡大は続いており、いまだ未曾有のウイルス感染症との闘いの最中といえるでしょう。間もなくインフルエンザ流行の時期に入ります。今後はCOVID-19のみならず、インフルエンザに対する備えも必要です。

COVID-19は感染症としての人体への健康障害だけでなく、外出制限や産業活動の停止に伴い、深刻な経済危機をもたらしています。現在、治療薬やワクチン開発に世界中の製薬企業、大学がしのぎを削っていますが、副作用のため治験が一時中断するなど、臨床の現場への導入にはまだ時間がかかりそうです。今後は、COVID-19との共存(with corona)を前提とした新しい生活様式(new normal)や経済の活性化を考える必要があります。コロナ禍でも対応可能な持続性のある医療提供法、医療機関の在り方、新しい医療連携も確立しなければなりません。一方、視線を社会に向けると、様々な感染対策と経済活動の両立をめざした取り組みも試行されています。

我々アカデミア、医療人にとっても、学会などの学術活動、海外の研修者との交流などが制限されています。今後は従来のような国際学会は厳しいかもしれませんが、オンサイトとオンラインを併用した学会になると想像します。

また、コロナ禍で教育の現場でも大きな混乱が続いています。大学ではいまだ対面式の講義は一部のみ、医学生にとって最も大切な臨床実習も前期は中止、後期も多くの制限の中で始まったばかりです。また、大学生にとり課外活動は人間形成の上できわめて重要ですが、まだ再開できていないところがほとんどです。COVID-19の流行は数年続くと言われています。ましてや、講義のみならず課外活動は感染のリスクが回避できない、いわば三密のため従来のような行動は、有効な治療薬やワクチンが登場するまでは難しいと思います。

with coronaあるいはafter coronaでどのように教育活動を維持、発展させるかが問われています。私もnew normal(新しい通常)における教育の在り方を学生と一緒に考えていきたいと思います。具体的には、オンラインを駆使した講義や実習、海外医学生との交流は可能だと思います。VR(仮想現実)とAR(拡張現実)を利用した研修の教育の実践は1つの方向性でしょう。また、AIを活用した実習のシミュレーションも実現可能だと思います。従来の常識にとらわれず、前向きに「ピンチをチャンス」にしましょう。

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