【認知行動療法と睡眠制限療法は,不眠女性のうつ症状を改善する】
閉経移行期および閉経後女性において,不眠とうつはどちらも高率にみられる症状であり,さらに両者の間には関連がみられる1)。本研究では,閉経移行期から閉経後にかけて発症した慢性不眠症を有する117名の女性(平均年齢56歳)を,認知行動療法(cognitive-behavioral therapy for insomnia:CBTI),睡眠制限療法(sleep restriction therapy:SRT),および対照としての睡眠衛生教育(sleep hygiene education:SHE),のいずれかに無作為に割り付けて6カ月間経過を観察し,うつ症状に対する効果を比較した2)。
その結果,Beck Depression Inventory(BDI)で評価したうつ症状については,CBTIはこれを中等度~著明に改善し,SRTは治療開始6カ月後に中等度改善した。Dysfunctional Beliefs and Attitudes about Sleep(DBAS)で評価した睡眠に関する不適切な思い込みについては,CBTIとSRTの両者がこれを著明に改善した。Pre-sleep Arousal Scale(PSAS)で評価した睡眠前の興奮状態のうち身体的な興奮については,CBTIはこれを著明に改善し,SRTは中等度に改善した。SHEはいずれの尺度も有意に改善しなかった。
CBTIとSRTは閉経移行期・閉経後の不眠女性のうつ症状を改善することが示された。
【文献】
1) Terauchi M, et al:Maturitas. 2012;72(1):61-5.
2) Kalmbach DA, et al:Sleep Med. 2019;55:124-34.
【解説】
寺内公一 東京医科歯科大学茨城県地域産科婦人科教授