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卵巣過剰刺激症候群[私の治療]

No.5281 (2025年07月12日発行) P.45

吉野 修 (山梨大学医学部産婦人科教授)

登録日: 2025-07-12

最終更新日: 2025-07-08

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  • 卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome:OHSS)は,主にゴナドトロピン療法により卵巣の囊胞性腫大をきたし,高エストロゲン状態になる医原性疾患である。ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin:hCG)およびエストロゲンにより卵巣から血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)が誘導され,全身の毛細血管透過性亢進により血漿成分がサードスペースへ漏出し,循環血液量減少,血液濃縮,胸・腹水貯留が生じた状態である。急性腎不全,血栓症,肺水腫などの生命予後に関わる重大な合併症に進展することがある。

    ▶診断のポイント

    重症OHSSでは血液濃縮の改善と尿量確保を要するため,原則的に入院を勧める。重症OHSSを示す所見として,①強い腹部膨満感,嘔気・嘔吐,呼吸困難,腹痛の訴え,②腹部膨満感を伴う腹部全体の腹水あるいは胸水を伴い,卵巣は12cm以上に腫大,③Ht≧45%,WBC≧1万5000/mm3,総蛋白質<6.0g/dLまたはアルブミン<3.5g/dLが挙げられる。卵巣腫大があると捻転のリスクがあることも留意すべきである1)。また,妊娠に伴う内因性hCG作用によりOHSSは重症化して遷延しやすいため,妊娠の有無の確認は重要である。

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