心や行動に変化が生じるのには理由がある。生活習慣、対人関係、経済的な事情、身体疾患や薬など、その理由は多様だ。しかし、働く人の心や行動の変化は、いつの頃からかメンタルヘルス不調、発達障害や認知症のせいと決めつけられやすくなった。だが、その決めつけが危険なことを教えてくれた人がいる。
その人とは同僚として働いた時期があった。とても有能で人柄も素晴らしく、職種は違えども密かに尊敬の念を抱いていた。その人の異動を知らされた時の落胆は今も思い出されるほどである。とはいえ、大きな組織の中で異動はつきものだ。気を取り直し、異動後もその人からは共通の業務を通して様々なことを教えていただいた。
ある日、その人の異動先の上司から、「これまでだったらありえないミスが増えている、うつ病かもしれないから診てもらえないか」と連絡があった。産業医ではない筆者に依頼するのには、これまでのお付き合いもあってのことだろうと思い、診察を引き受けた。
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