【質問者】
池田公史 国立がん研究センター東病院肝胆膵内科長
【Child-Pugh score 7または8の患者では分類Aの患者と同様の薬物療法をより慎重に行う】
肝細胞癌患者の特徴として,大部分の患者でC型肝炎ウイルス,B型肝炎ウイルス,アルコール,脂肪性肝炎などによる慢性肝疾患を有していることが挙げられます。慢性肝疾患は肝細胞癌の発生母地になるとともに,持続的な肝障害により肝機能が低下した状態を引き起こします。したがって,肝細胞癌に対する治療法の決定には,腫瘍の大きさ,数,転移の有無といった腫瘍因子に加えて,背景肝の肝予備能を十分に検討し,根治度と治療により想定される予備能低下のバランスを慎重に判断する必要があります。
肝細胞癌の治療法には,切除,穿刺局所療法,肝動脈化学塞栓療法,薬物療法などがあります。薬物療法は,脈管侵襲や肝外転移を有しているなど,他の局所療法の適応とならない進行肝細胞癌患者が対象になります。肝細胞癌に対する薬物療法として,わが国では,ソラフェニブ,レンバチニブ,アテゾリズマブとベバシズマブの併用投与が一次治療に,レゴラフェニブ,ラムシルマブが二次治療にそれぞれ有効性が示され,承認され使用されています。ただし,これらの有用性を示した臨床試験はすべて,肝予備能が良好なChild-Pugh分類A(表1)の患者を対象に実施されたものであり,Child-Pugh分類Bの患者に対する標準治療は確立していません。
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