【全身諸臓器の腫大や結節・肥厚性病変などを認める原因不明の特異な疾患群】
IgG4関連疾患(IgG4-RD)は自己免疫性膵炎(AIP)とともにわが国から発信された新規疾患概念である。高齢男性に多く,自己免疫異常や血中IgG4高値に加え,同時性あるいは異時性に膵,肝胆,唾液腺・涙腺,後腹膜腔など,全身諸臓器の腫大や結節・肥厚性病変などを認める原因不明の疾患群である。一方,AIPは「しばしば閉塞性黄疸で発症し,時に膵腫瘤を形成する特有の膵炎であり,リンパ球と形質細胞の高度な浸潤と線維化を組織学的特徴とし,ステロイドに劇的に反応することを治療上の特徴とする」と定義される。IgG4関連の1型と好中球上皮病変の2型に分類され,1型では腹痛は無~軽度であり,閉塞性黄疸,糖尿病症状,随伴する膵外病変による症状を呈することが多いが,2型では腹痛が多く,しばしば急性膵炎として発症し,それぞれ異なる病態である。わが国では1型AIPがほとんどを占める。
膵癌や胆管癌など悪性疾患の除外とともに,膵画像所見,血液所見,病理組織所見,膵外病変,ステロイド反応性などを項目にした診断基準により総合的に診断する。膵画像検査で「ソーセージ様」を呈する膵のびまん性腫大を認め,造影CT/MRI門脈相での遅延性増強と被膜様所見を認めれば,AIPである可能性が高い。限局性腫大や腫瘤の場合,がんを否定するための膵生検が必要である。MRCPやERCPで胆管の壁肥厚/狭窄や主膵管の狭細像は特徴的所見であるが,胆管癌との鑑別を要する。膵癌や胆管癌でみられる血中CA19-9高値やFDG-PETでのFDG異常集積はAIPやIgG4-RDでも認めるため診断的意義は乏しく,むしろそれらの改善はステロイド治療後の判定に有用である。
【解説】
岡崎和一 関西医科大学香里病院病院長