東北大漢方・統合医療学共同研究講座特命教授の髙山真氏は2月13日、オンライン形式で行われた日本漢方医学教育振興財団創立5周年記念講演会で講演し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する漢方薬の効果を検討するため、東北大病院を中心に進めている観察研究の概要を説明した。
この観察研究は、日本東洋医学会主導臨床研究「COVID-19に対する漢方薬による予防・治療研究」(IMJEDI study)の1つ。多彩な症状を呈するCOVID-19の臨床では、症状に合わせて漢方薬を含め様々な治療が行われていることから、軽症・中等症患者への投薬実態を調査し、西洋薬、漢方薬、それらの組み合わせなど効果の期待できるものを探る「後ろ向き観察研究」で、1000症例の集積を目標としている。
講演で髙山氏は「歴史的に漢方薬は未病や感染症治療、体力の回復に用いられてきたことから、COVID-19の治療や発症予防においても漢方薬の効果が期待される」と述べ、西洋薬との組み合わせを含めCOVID-19に対する漢方薬の効果を検討することの意義を強調。
2月13日現在、約200症例まで登録が完了する見込みとなっているものの、1000症例に達するにはさらに「多くの先生方の協力が必要」だとして、観察研究への参加を呼びかけた。
東洋医学会のIMJEDI studyではこのほか、軽症・中等症の感冒様症状を有するCOVID-19患者を対象に漢方薬の治療効果を検証する前向き介入研究(目標症例数150例)や、医療従事者を対象に漢方薬のCOVID-19発病予防効果を検証する前向き介入研究(目標症例数6000例)も進められており、髙山氏はこれらの研究への協力も求めた。
この日の講演で髙山氏は、東北大の漢方医学教育におけるPBL(Problem Based Learning)の取り組みも紹介。新興ウイルス感染症に対する漢方薬治療の役割などについてWEBでディスカッションするなど、コロナ禍の中でも、学生が自ら問題を抽出し解決する能力を育成するPBLの実践を継続していることを報告した。