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ヨッパライ電話[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(350)]

No.5061 (2021年04月24日発行) P.67

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2021-04-21

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妻と母との3人家族である。夕食の会話はあまり盛り上がらないことが多いけれど、その日はちがった。父母とも兄弟姉妹が4人ずつだが、残っているのは母の弟と妹のみ。そんな親戚の昔話でえらく話が弾んだ。

酔った勢いで、叔母に電話してみようということになった。あまり電話が好きではないから、よほどのことがないと電話しない。記憶は定かでないが3~4年ぶりだ。

「なんかあったの?」と驚いたように聞くから、「ごめんごめん。酔うてるだけです。おかあちゃんが病気で倒れたり死んだりしたんとちゃうから安心して」と話し出し、しばし近況を話し合ってえらく楽しかった。ついでに叔父にも電話することに。

叔母は埼玉なのでめったに会えないのだが、この叔父は奈良に住んでいるので、ときどき遊びに来る。でも、電話はやはり3~4年ぶりだ。「急に電話くるから、姉ちゃん死んだんかと思ったやんけ」と笑ってた。

ここまできたらついでだからと、姉にも電話。おそらく電話するのは10年ぶりくらいである。なので、発信者の名前を見たとたん母親に何かあったと思ったそうで、えらく怒られた。すんませんでした。

だんだんとおもろくなってきて、次々と知り合いに電話。ふだんしないので、みんなびっくり。「なんでこんな時間に電話してきたって思ってるやろ?」、「はい」、「実はな……、何もないねん」という会話を繰り返した。みんな喜んでくれてた(はず)。

スマホの電話番号リストはほとんど整理していない。なので、亡くなった友人の電話番号も残っていたりして、消すには忍びないなぁと思いながら眺めていた。ふと、ある友人の名前に目がとまった。
高校時代の友人で親しかったのだが、遠くの職場へ赴任したこともあって、最近は音信がなかった。風の噂に、早期退職してカナダへ移住したとか聞いていた。大昔の電話番号だ。通じないだろうと思ってかけてみた。呼び出し音はちゃんと鳴った。日本の携帯を残してるんかなぁと思いながら就寝。

翌朝、その友人から「おい、何かあったんか?」と電話があった。いやいや、こういう事情で電話しただけやねんと言ったら爆笑。そして何年ぶりかでしばし楽しく歓談。
やたらと楽しかったから、またしばらくしたらやってみようかしらんと思っています。迷惑かもしらんけど。

なかののつぶやき
「メールとかLINEやらで連絡をとることばかりで、電話をすることが本当に少なくなりました。もともと電話があまり好きじゃないから楽ちんでいいのですが、それでも、ちょっと寂しい感じがします。コミュニケーションツールとしての電話の地位を取り戻すため、時々、今回みたいな無意味な電話をランダムな相手にしてみようかしらんと、ちょっと本気で思っています。もちろん酔っ払わずに、です」

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