株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

2014年「地域包括ケア研究会報告書」をどう読むか? [深層を読む・真相を解く(34)]

No.4703 (2014年06月14日発行) P.15

二木 立 (日本福祉大学学長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-30

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • next
  • 地域包括ケア研究会(座長:田中滋慶應義塾大学大学院教授)の「地域包括ケアシステムを構築するための制度論等に関する調査研究事業報告書」(平成25年度老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進等事業。以下、2014年報告書)が5月に発表されました。地域包括ケア研究会は2008年度に発足し、2009年、2010年、2013年、そして本年と合計4回、いずれも5月(名目上は3月)に報告書を発表して、地域包括ケアシステムの概念・理念の拡張・「進化」(田中滋氏)を主導してきました。
    これらの報告書は、今や「国策」(宇都宮啓厚労省保険局医療課長)とまで言われるようになっている地域包括ケアシステムを理解するための「必読文献」ですが、医療関係者の間では認知度は高くありません。そこで本稿では、2014年報告書の内容を過去3回の報告書と比較しながら検討し、2014年報告書の新しさ・「変化」と「不変化」を明らかにします。

    急性期医療・病院の役割を明示

    一番大きな変化は、2014年報告書が、初めて、地域包括ケアシステムの中に急性期医療や病院の役割を明示したことです。
    実は、2009年〜2013年の報告書は、地域包括ケアシステムを主として介護保険制度の枠内で論じていました。最初の2009年報告書から、医療は地域包括ケアシステムの構成要素に含まれていましたし、「医療と介護等の各種サービスの連携」も強調されていましたが、その医療は診療所医療や「訪問診療」に限定されていました。2010年報告書は、「2025年の地域包括ケアシステムの姿」として、わざわざ「病院等に依存せずに住み慣れた地域での生活を継続すること」(27頁)を強調していました。2013年報告書の「医療・介護の連携に向けたイメージ」図(22頁)にも、病院は含まれていませんでした。
    それに対し2014年報告書は「“支援・サービス”を受ける場所」を「住まい」「医療機関」「住まいと医療機関の中間施設」の3つに分類した上で、「急性期の医療機関」「急性疾患への対応」の重要性を強調しました。これは非常に重要な「進化」です。

    残り2,450文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top