現在、通常国会では「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」が審議されており、その焦点は中所得層の後期高齢患者の一部負担の2割引き上げになっています。
実は私は4月20日の衆議院厚生労働委員会に参考人として呼ばれ、2割負担に反対する理由を述べました。第1の理由は以下の通りです。「私は医療・社会保障における『応能負担原則』に大賛成です。しかし、それは保険料や租税負担に適用されるのであり、サービスを受ける際は所得の多寡によらず平等に給付を受けるのが『社会保険の原則』と考えています」。これは私の持論で、社会保障研究者の通説でもあります。
ただし、これに対して、複数の方から、それなら、現在年齢によって異なる一部負担割合を統一すべきではないか? との質問を受けています。実際に、社会保障費抑制を目指す研究者は以前から高齢者の一部負担の3割への引き上げを主張しています。最近では、「社会保障の機能強化」を支持する有力研究者も、低所得者への配慮を大前提にして、全年齢層で「将来的には3割に揃えることになる」と指摘しています(権丈善一慶應義塾大学教授「高齢者患者負担、進むべき方向はシンプル」m3.com 2021年1月23日)。
私も低所得の現役世代が3割負担であることは過酷だと思います。そのため私は究極的には、現役世代を含め、全世代の一部負担を全廃すべきと考えています。ただし、これをすぐ実現する政治的条件はないので、当面は全世代の一部負担を、後期高齢者の標準的一部負担である1割に統一することを目指すのが少しは現実的と思っています。本稿では、私がこう考える理念的および実際的理由を述べます。