【質問者】
森内浩幸 長崎大学医学部小児科学教室教授
【ワクチンへの信頼の欠如が大きく影響。医療従事者への教育も必要だと思われる】
Vaccine hesitancy(忌避,躊躇)は「ワクチン接種環境が提供されているにもかかわらず,接種遅延または拒否が発生している状況」と定義されています1)。それは,誰にでも存在するごく自然な考え方であり,お子さんに対してすべての定期接種を推奨通りに接種している保護者の中にも一定のvaccine hesitancyは存在しています。なお,vaccine hesitancyには時間,場所,ワクチンの種類などが複雑に影響することが知られており,すべてのワクチン接種に一律に反対するanti-vaccine movementとは大きく異なります。
Vaccine hesitancyの発生にはいくつかの要因があることが知られていますが,特にワクチンに対するconfidence(信頼)の欠如が大きく影響すると言われています2)。たとえば,国内においては2013年にhuman papillomavirus(HPV)ワクチンが定期接種化された直後,接種後の慢性疼痛と機能性身体症状が報告され,国は接種の積極的勧奨を一時的に中止しました。その結果,HPVワクチンに対する信頼は大幅に低下し,今日においても国内における接種率は1%を下回っています。一方で,同様に一時的にHPVワクチン接種率が低下したアイルランドでは,国やアカデミアが積極的に接種を勧めたことによりHPVワクチンに対する信頼が徐々に回復し,接種率は60%前後まで回復しました3)。
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