感染性心内膜炎(infective endocarditis:IE)は,弁膜や心内膜,大血管内膜に細菌が集簇した疣腫(vegetation)を形成する全身性敗血症性疾患である。弁組織破壊に伴う弁逆流によって生じた心不全や,血管塞栓症など多彩な臨床症状を呈する。IE発症率は10万人当たり,一般小児では年0.34〜0.64,先天性心疾患を有する小児では年41となる1)。先天性心疾患では右心系のIEが多い。IEのリスクとして,歯科治療やアトピー性皮膚炎に伴う皮膚感染症などが挙げられる。
ほとんどのIE症例では発熱が認められる。そのほか悪寒・振戦,食欲不振や体重減少,易疲労感などの症状を伴う。微熱や倦怠感を伴い不登校となり,心因性疾患を疑われて見逃される症例も経験する。遷延する発熱,発熱・解熱を繰り返す抗菌薬投与例,新規に出現した心雑音などではIEを積極的に疑う。
診断には修正Duke診断基準2)が用いられ,臨床症状以外に血液培養や心エコー検査が有用である。特に心エコー検査では,疣腫の部位や大きさ,短絡病変の有無,弁の損傷および逆流などの所見を確認する。IEを疑う状況では,可能であれば採血間隔を30分以上あけて3回以上の血液培養を採取することが重要である。起炎菌は連鎖球菌,ブドウ球菌が多く,そのほか腸球菌,HACEK(Haemophilus aphrophilus,H. paraphrophilus,Aggregatibacter actinomycetemcomitans,Cardiobacterium hominis,Eikenella corrodens,Kingella kingae),真菌などが挙げられる。血液培養の採取量は新生児で1〜2mL,乳児で2〜3mL,小児で3〜5mL,思春期で10〜20mLが目安となる3)。適切に採取された場合の陽性率は80%を超える。
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