肺炎球菌は髄膜炎,敗血症・菌血症などの侵襲性感染症,および副鼻腔炎,中耳炎,肺炎などの気道感染症の原因となる細菌である。市中における気道感染症の原因微生物はほかにもあるが,細菌感染の関与を疑った場合には,肺炎球菌の関与を想定した治療が必要である。髄膜炎の場合,ペニシリンに対する感受性の判定は,最小発育阻止濃度のカットオフ値が異なることに注意が必要である。
肺炎における代表的症状・検査所見を述べる。
突然の発症,膿性痰,胸痛などが典型的である。ウイルス感染症に続発する場合は,気道症状の再増悪を呈することがある。
喀痰培養とグラム染色所見を合わせて,原因菌か否かの判断を行う。血液培養で検出されれば,一般的には確定診断となる。尿中抗原検査については,保菌の場合でも陽性となることがあり注意が必要で,特に小児では推奨されない。
肺炎球菌による肺炎の治療は,ペニシリン系抗菌薬による治療が基本である。通常は抗菌薬治療後24~48時間以内に治療反応が得られる。なお,治療の際は,他の細菌の関与に注意が必要である。また,小児ではオゼックス®(トスフロキサシン)以外のニューキノロン系抗菌薬は禁忌となっている。
低感受性菌の関与が想定される場合は高用量を選択する。
一手目 :成人:サワシリン®250mg錠(アモキシシリン)1回2~4錠1日3回(毎食後)7日間,小児:ワイドシリン®20%細粒(アモキシシリン)1回15~30mg/kg(アモキシシリンとして)1日3回(毎食後)7日間
一手目 :成人:クラビット®500mg錠(レボフロキサシン)1回1錠1日1回(夕食後)7日間,小児:オゼックス®15%細粒(トスフロキサシン)1回3mg/kg(トスフロキサシンとして)1日2回(朝・夕食後)7日間
アナフィラキシーに至らない状況では,第三世代セフェム系薬などによる代用が可能である。
血液培養陽性時の投与期間は10~14日間とする。
一手目 :成人:ビクシリン®注(アンピシリン)1回2g 1日3~4回(点滴静注)7日間,小児:ビクシリン®注(アンピシリン)1回50mg/kg 1日3~4回(点滴静注)7日間
一手目 :成人:クラビット®注(レボフロキサシン)1回500 mg 1日1回(点滴静注)7日間,小児:塩酸バンコマイシン注 (バンコマイシン塩酸塩)1回15〜20mg/kg(8時間ごとに点滴静注)10〜14日間(要治療薬物モニタリング)
アナフィラキシーを疑わない状況では,以下のような選択もある。
一手目 :成人:ロセフィン®注(セフトリアキソン)1回2g 1日1回(点滴静注)7日間,小児:ロセフィン®注(セフトリアキソン)1回75mg/kg 1日1回(点滴静注)7日間
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