No.5072 (2021年07月10日発行) P.68
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2021-07-07
最終更新日: 2021-07-06
我が家は「目覚ましいらず」だ。一応、5時25分にセットしてあるが、鳴るまで寝ていたことはほとんどない。おおよそ5分から10分前には目が覚める。歳をとったからという訳ではなくて、若い頃からである。
だからという訳ではないが、日常生活でもかなり時間にうるさい。研究室のミーティングなどは絶対に時間厳守である。もちろん、待ち合わせなどには、よほど不測の事態がおこらない限り遅れたことはない。
時間を守るかどうかというのは習慣といえばそれまでだ。しかし、それだけではないのかもしれない。もしかすると、時間にきっちりしているのは、体内時計がしっかりしているせいかもしれない。気になってネット検索をしてみたが、どうやら違うようだ。
「目覚ましいらず」は「自己覚醒」と呼ばれている。思っていたよりも一般的で、「米国では20歳以上の約半数が、この自己覚醒を習慣に」しているし、「日本でも労働者を対象にした調査では、20代が7%、30代が18%、40代が27%、50代が37%と、年齢が上がるにつれて多くなる」らしい。
ホンマですか。そんなに多いんですか。その記事によると、トレーニングをしたら8割の人が1週間で自己覚醒できるようになるという。それも、単に「何時に起きよう」と寝る前に思うだけでいい。朝、起きられないという人がけっこういるように思うけれど、なんなんですかそういう人たちは。
眠っている間も時間が気になっているんだから、睡眠が浅くて体に悪いのではないかという気がしていたのだが、そんなこともないようだ。むしろ、自己覚醒した方が仕事の能率がよくなることが知られている。
我々の体には、サーカディアンリズム=概日周期のメカニズムがあって、およそ24時間のリズムが刻まれている。しかし、自己覚醒のような半端な時間感覚が概日周期によるとは考えにくい。なので「インターバルタイマー」があるのではないかと想定されているらしいが、その本体は不明である。
もうひとつ不思議なことがある。毎年、夏の間は、目覚める時間が1時間ほど早くなるのだ。だから、このところはほとんど4時半起きである。雨戸を閉めて暗くしても目が覚めるので、明るさのせいではない。
この「不随意サマータイム」はわたしだけの現象なのでありましょうか。いろいろとわからんことがあるもんですわ。
なかののつぶやき
「本文での引用は、『すっきり目覚め、作業効率が上がる自己覚醒法』と題された日経ビジネスのネット記事(2016年3月3日付)からです。『自己覚醒』で検索すると、けっこうヒットして勉強になりました。でも、何時に起きると思っただけで、ちゃんとその時間に起きられるってすごいことないですか? 目覚めている時は、いろんな活動をするから、それによって時間感覚がむしろ歪められてるんでしょうか。興味はつきませんわ」