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アルコール関連肝疾患[私の治療]

No.5075 (2021年07月31日発行) P.41

池嶋健一 (順天堂大学大学院医学研究科消化器内科学教授)

登録日: 2021-07-29

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  • アルコール関連肝疾患(alcohol-related/-associated liver disease:ALD)は過剰飲酒に起因する肝臓病で,アルコール使用障害(alcohol use disorder:AUD)を背景とすることが多い。アルコール依存症(alcoholics)に対する偏見を払拭するべく,欧米ではalcoholicという用語を極力排除し,alcohol-relatedないし-associatedと表記されるようになった1)2)。ALDは初期病変の脂肪肝から脂肪肝炎を経て肝硬変へと進行し,肝癌の発症母地としても重要である。急激な飲酒量増加によりアルコール性肝炎が惹起され,その繰り返しで肝線維化が進行するが,重症例はacute on chronic肝不全の病態を呈して予後不良である。ALDの病態は栄養障害と関連が深く,近年はメタボリックシンドロームの合併も問題視される。

    ▶診断のポイント

    ALDは血清肝酵素上昇(AST>ALT,γGTP高値)や腹部超音波検査やCT・MRIなどの画像診断での脂肪肝の所見に加えて,アルコール使用歴の詳細な聴取が重要である。AUDのスクリーニングには,AUDIT(alcohol use disorders identification test)などの問診票が有用であり,診断はICD-10の基準による3)。一般的に5年以上の常習飲酒(純エタノール換算60g/日以上)が過剰飲酒とされるが,女性やアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)活性欠損者(ヘテロ型)では,その2/3程度の飲酒歴でもALDをきたしうる4)。ALDH2活性欠損は,遺伝子解析を行わなくてもフラッシングの有無で判定可能であるが,飲酒継続により飲酒耐容量の増加とともにフラッシングは軽減するため,飲酒開始初期のフラッシングを聴取する必要がある。飲酒量の客観的評価は案外難しいが,直近2〜3週間の飲酒量を反映する間接的バイオマーカーとして,糖鎖欠損トランスフェリン/トランスフェリン比( carbohydrate-deficient transferrin:%CDT)測定がALDの診断補助に有用である。

    純粋なALDの診断には,他の肝障害の成因(ウイルス性肝炎や自己免疫性肝疾患など)を除外する必要があるが,合併していることも少なくない。非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD),特に非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)との鑑別は時に難しく,男性で30g/日,女性で20g/日を超える飲酒はALDに含める傾向にある1)

    肝線維化の程度に関しては,Fib-4 indexや各種血清肝線維化マーカーに加えて,超音波エラストグラフィー検査(フィブロスキャン®など)による非侵襲的評価が有用である。肝予備能低下は,プロトロンビン時間延長(PT-INR値上昇),血清アルブミン値の低下や血清ビリルビン値上昇および,腹水や肝性脳症の程度・治療応答性で総合的に評価する(Child-Pughスコア)。CT・MRIでは門脈圧亢進症所見(脾腫や門脈-大循環短絡路)に加えて,同時に膵病変(慢性膵炎・膵癌)のスクリーニングも可能であり,上部内視鏡検査は食道・胃静脈瘤のチェックのみならず,頭頸部・食道癌のスクリーニングとしても重要である。

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