株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

筋萎縮性側索硬化症(ALS)[私の治療]

No.5075 (2021年07月31日発行) P.42

髙橋祐二 (国立精神・神経医療研究センター病院特命副院長/脳神経内科診療部長)

登録日: 2021-07-30

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,運動神経細胞の進行性脱落により全身の筋力低下・筋萎縮をきたす神経変性疾患である。大きく四肢型と球麻痺型に分類され,球麻痺型は一般的に予後が悪い。嚥下障害,呼吸障害をきたし,生命維持のためには胃瘻,気管切開・人工呼吸器装着等の処置が必要になる。人工呼吸器を装着しない場合の平均予後は2~4年と言われているが,患者によって差がある。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    初発症状は上肢あるいは下肢の筋力低下・筋萎縮,構音・嚥下障害であり,徐々に他の部位にも症状が広がる。稀に呼吸障害から発症する例がある。眼球運動障害,感覚障害,膀胱直腸障害,褥瘡はきたしにくい。前頭側頭型の認知機能障害を合併する場合がある。

    【検査所見】

    神経生理学的検査が診断に有用である。特に針筋電図で神経原性変化を複数の領域に認める。鑑別のために神経伝導検査,髄液検査,頭部・脊椎MRI等を行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    ALSの病態進展抑制薬としてはリルテック®(リルゾール)とラジカット®(エダラボン)がある。リルゾールは経口薬であり,簡便に投与可能である。呼吸機能低下例(FVC 60%以下)には投与しない。肝障害,貧血,間質性肺炎などの副作用に注意する。エダラボンは注射薬であり,呼吸機能低下例にも投与可能である。腎機能障害の副作用に注意する。特にALSの進行期では全身筋量低下により,血清クレアチニン値が見かけ上低値を呈するため,シスタチンCなど他の指標も参考にする。

    対症療法として,痙縮に対しては抗痙縮薬,流涎に対しては三環系抗うつ薬や抗コリン薬を用いることがある。抗痙縮薬を用いる場合には,脱力や呼吸機能低下に注意しながら少量から開始して漸増する。呼吸苦の緩和に対しては強オピオイド(モルヒネ)が有効である。国内外のガイドラインでも推奨されており,呼吸苦の緩和が報告されている。

    残り1,891文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top