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B型肝炎ワクチンの接種で抗体上昇がない場合は?

No.5081 (2021年09月11日発行) P.50

土肥弘義 (新百合ヶ丘総合病院消化器内科医長)

登録日: 2021-09-09

最終更新日: 2021-09-07

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B型肺炎ワクチンの接種について。夫がB型肝炎患者のため,妻が予防でワクチン接種をしました。抗体上昇を認めず,2回のところを3回の接種を試みましたが,抗体の上昇がない場合はどうすればよいのでしょうか。ご教示下さい。
(北海道 N)


【回答】

【ワクチンの種類や投与方法の変更,4回接種などを検討する】

一般的なB型肝炎ワクチンの接種スケジュールは,初回接種のあと1カ月後,6カ月後に接種を行い,計3回のワクチン接種で1シリーズの接種になります。現在,国内ではビームゲン®(KMバイオロジクス),ヘプタバックス®-Ⅱ(MSD)の2つのワクチンが一般的に用いられており,どちらのワクチンでも9割以上の高い抗体獲得率が添付文書に記載されていますが,これは逆に言えば約1割では抗体を獲得できないことになります。

ワクチンによる抗体獲得に寄与するとされる要因は,被接種者側の因子として,年齢・性別・肥満・基礎疾患(免疫不全等)・遺伝的因子〔ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)〕などがあり,それ以外にワクチンの種類や,接種手技・スケジュールも関与すると報告されています。ワクチン無効例への対応に関しては,日本肝臓学会のB型肝炎ワクチンワーキンググループが,同学会評議委員など855人を対象にして2017年にアンケートを行っており,筋肉内注射(31%),皮内注射(4%),ワクチンの種類を変更(27%),4回以上投与(23%),倍量投与(6%)などが対策として挙げられています1)

私たちの施設において2004~15年に初めてB型肝炎ワクチンを接種した3755人の学生(平均年齢22.2歳)の記録を用いて後方解析を行ったところ,ワクチンの種類でもわずかに有効性に違いがみられています。初回シリーズにおいて抗体を獲得できなかった不応答症例に2シリーズ目を接種した場合,69%(73/106人)で抗体が誘導されました。その際に初回シリーズと同じワクチンを使用した場合の抗体獲得率は53%(25/47人),異なるワクチンを使用した場合は81.4%(48/59人)であったことからワクチンの変更も有効な手段となる可能性があります2)

また,初回シリーズ3回で抗体を獲得できなかった場合でも,4回目の接種を行うことで52.2%(105/201人)に抗体が誘導されました(未発表データ)。その一方で,少数ながら複数回(最大6シリーズ)のワクチン接種を行っても抗体を獲得できなかった症例もみられました。その原因は明らかではありませんが,遺伝的要因3)や接種時の免疫環境が影響している可能性2)が考えられます。

質問者様においては,今までの接種状況を確認し,可能であればワクチンの種類や投与方法の変更,4回接種などが対策として挙げられます。

【文献】

1) 田中靖人, 他:肝臓. 2018;59(6):259-63.

2) Doi H, et al:Hepatol Commun. 2019;3(6):812-24.

3) Nishida N, et al:Hepatology. 2018;68(3):848-58.

【回答者】

土肥弘義 新百合ヶ丘総合病院消化器内科医長

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