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膵神経内分泌腫瘍の集学的治療

No.5085 (2021年10月09日発行) P.50

菅野 敦 (自治医科大学内科学講座消化器内科学部門講師)

工藤 篤 (東京医科歯科大学病院肝胆膵外科 病院長補佐,病院教授)

登録日: 2021-10-07

最終更新日: 2021-10-05

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  • 膵神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)は,近年の画像診断や超音波内視鏡下穿刺吸引法(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration:EUS-FNA)による病理組織学的診断の発展により症例数が増加しています。発見時既に転移している非切除例も増加し,治療法の選択に苦慮することも少なくありません。
    化学療法や手術を含めた膵NETに対する集学的治療について,東京医科歯科大学病院・工藤 篤先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    菅野 敦 自治医科大学内科学講座消化器内科学部門講師


    【回答】

     【効果発現までの時間が早い順番に薬を選択し,切除の可能性を忘れずに】

    膵NETの28~77%は肝転移(neuroendocrine liver metastasis:NELM)を起こします1)。NELMの診断にはEOB-MRIが推奨されます2)。NELMは5個以上存在することが多く,肝容量に対する肝腫瘍量の割合が25%以上になると予後不良です。Ki67が52%未満の場合は薬物療法よりR0/1切除のほうが予後が良好です3)。当科では,薬物療法が手術に先行する場合,少なくとも3カ月以上観察して腫瘍個数が増加しないことを肝切除の条件としています。

    薬物療法は2010年以降急速に発展してきました。スニチニブは膵NET-G1/2/3に有効であり,効果発現までの時間が数週間と最も早く,早く効果判定を得るためには第一選択となりますが,心機能に注意が必要です4)。その他の有害事象には手足症候群と過量投与による急激な血小板減少などがありますが,投与量を適切に減量することで比較的安全にコントロールできます。NET-G3はプラチナベースが1st lineであり,効果判定は1カ月で行えます5)

    エベロリムスは効果判定までに4カ月を要し,間質性肺炎,皮疹,口内炎など多彩な有害事象があり,B型肝炎や結核の再活性化に気をつける必要があります。ストレプトゾシン(STZ)は効果判定までに4カ月以上を要し,Ki67>5%で有効です6)。テモゾロミドは,効果判定までに4カ月以上を要し,NET-G3に対して有効です。Ki67<55%のNETにおいて,1st line CAPTEM(カペシタビン+テモゾロミド)の奏効率が33~70%であるとする報告もあります5)7)~9)。ソマトスタチンアナログも効果判定までに4カ月以上を要します。

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