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遺伝性慢性膵炎,特発性慢性膵炎の診断と治療はどこまで進歩したのでしょうか?

No.5086 (2021年10月16日発行) P.49

工藤 篤 (東京医科歯科大学病院肝胆膵外科 病院長補佐,病院教授)

清水京子 (東京女子医科大学消化器内科教授)

登録日: 2021-10-18

最終更新日: 2021-10-14

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  • 膵星細胞やゲノム医療などの基礎研究が進み,慢性膵炎の中でも特に遺伝性,原因のわからない特発性の病態解明が進んでいるようですが,診断と治療はどこまで進み,今後どのような展望が期待されるのでしょうか。東京女子医科大学・清水京子先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    工藤 篤 東京医科歯科大学病院肝胆膵外科 病院長補佐,病院教授


    【回答】

    【遺伝性膵炎,特発性膵炎では複数の遺伝子変異が同定されている】

    新しい慢性膵炎の定義としてmechanistic definitionが2016年に国際的に提唱され,慢性膵炎は遺伝的因子,環境因子,その他の危険因子を有する患者において,膵実質の傷害やストレスに対して持続的に病的な反応が起こる膵の病的線維化炎症症候群と定義されました。

    遺伝性膵炎の原因遺伝子としてcationic trypsinogen遺伝子(PRSS1)の変異が最初に報告され,膵分泌性トリプシンインヒビター遺伝子(SPI NK1),cystic fibrosis transmembrane conductance regulator遺伝子(CFTR),anionic trypsinogen遺伝子(PRSS2),chymotrypsinogen C遺伝子(CTRC),carboxypeptidase A1遺伝子(CPA1),claudin 2遺伝子(CLDN2),transient receptor potential channel(TRPV6)など,様々な膵炎関連遺伝子異常が同定されています。わが国の遺伝性膵炎全国調査では,遺伝性膵炎73家系のうちPRSS1遺伝子変異を30家系(41.1%)に,SPINK1遺伝子変異を26家系(35.6%)に認めています。

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